コロナ禍以降、すべての一般病棟の稼働率が低下した

図表1をご覧ください。これは543施設を対象に、コロナ患者受け入れ有無別で、一般病棟の稼働率の推移(2月から5月)をみたものです。それぞれの棒グラフは、この時期の全国の急性期病院の稼働率を俯瞰するとどのような状況だったのかが一目できるよう、5つに分けた稼働率ごとの施設数割合を示しています。

コロナ患者受入有無別 DPC一般病棟稼働率推移
出所=『医療崩壊の真実

コロナ患者を受け入れた病院(右列)では、2月時点で一般病棟が8割以上稼働している病院が57%(2月の平均稼働率は82%。冬季は感染症患者が増えるため年平均より高い稼働率)でしたが、4月になると8割以上の稼働が28%(同73%)、5月は8%(同62%)まで落ち込んでいます。3月から4月にコロナ患者が急増する中で、主に中等症や軽症の患者の受け皿となっていた一般病棟の稼働率が大きく落ち込んでいたのです。

さらにこのデータで注目すべきは、この傾向はコロナ患者を受け入れていない病院(左列)でも同様に起きていることです。2月には8割以上稼働していた病院は54%ありましたが、本格的なコロナ禍に陥った4月には33%になっています。平均稼働率で見ても、2、3月が78%だったのに対して、4月に72%、5月には64%と大きく落ち込んでいます(%数字は小数点以下四捨五入)。

コロナは本来の医療ニーズを顕在化・適正化した

コロナ受け入れ病院と同様に、コロナ患者を受け入れなかった病院での一般病棟の落ち込みは、コロナ以外の感染症患者の減少、予定手術や検査の延期、国民のコロナ感染を恐れての受診控え、さらに国民が診療所へも受診を控えたことによる診療所から病院への紹介患者数減(急性期病院の新患の多くは周辺医療機関からの紹介患者であるため)などが考えられます。

病原性ウイルス
写真=iStock.com/JONGHO SHIN
※写真はイメージです

なぜなら、一般国民は、コロナ患者を受け入れていない医療機関の区別がつかないことから、一律同様の受診行動となったと推察されるからです。また、受け入れていない病院にとっても、一般外来や救急搬送でいつコロナが疑われる患者が来院するかわからないため、予定入院を延期した可能性があります。

ここで重要なポイントは、患者の減少はコロナ禍だけに留まらない点です。afterコロナになってもこの傾向が一部続く可能性が高いということです。マスク着用や手洗いの徹底などによる衛生環境の向上は、afterコロナで少し緩んだとしても、一度身についた習慣はある程度は持続するでしょうから、コロナ以外の感染患者の減少は今後も続くでしょう。

さらに、以前は軽症でも自己負担が少ないため気軽にコンビニ受診のように病院にかかっていた患者も不要不急の判断をする行動が身につき、モラルハザード的受診はafterコロナでも控える傾向が続くと考えられるからです。

つまり、コロナは本来の医療ニーズを顕在化・適正化し、結果的に、需要と供給のミスマッチを改善の方向に導いていくと考えられるのです。