コロナ患者を看護する看護師の労力は、通常患者の2倍
医師や看護師などの医療従事者は、コロナ患者の治療やモニタリングのため、患者ごと・ケアごとに感染予防対策として医療用防具服の着脱を行い、一般患者の数倍の労力を費やして重点的にコロナ患者の対応をしています。
私たちの調査によると、中等症までのコロナ患者に対しては患者数対看護師数を4対1から3.5対1としている病院が多いようです。一般病棟の看護体制が7対1であることを考えると看護師の労力は通常患者の2倍かかっていることになります。一病棟の病床数が仮に40床だとすると、同じ7対1の看護体制でコロナ患者を受け入れる場合、20人が最大キャパシティーとなります。これが、通常よりも稼働率が低下する理由です。
不足していたのは「病床数」ではなく「医療従事者」なのです。
一方、③と④は、コロナ患者を他疾患の患者と同じ病棟で受け入れているパターンになります。③と④の違いは、コロナ患者の数が多いか少ないかの違いです。③は比較的多くのコロナ患者を一般の患者と同じ病棟で受け入れており、④は一般患者がメインでコロナの患者の受け入れは少数というパターンです。
パターン③、④の場合、院内感染予防策のため、2人部屋や4人部屋、または個室を「コロナ患者専用病室」として使用し、一般患者は入れないという方法です。例えば4人部屋を1人のコロナ患者が入院した場合、他の3病床は使えなくするか、別のコロナ患者を受け入れるかの対応をとりますが、一般患者を同じ部屋に入れることはできないため病床稼働率は下がります。
このように、一般病棟におけるコロナ受け入れの実態をみると、感染予防策として病室ごとに「動線」を分ける事ができる場合、一般患者の制限はコロナ専用病室の病床数に限られます。
一方、「動線」を分ける事ができず病棟全体をコロナ専用にする場合は、一般患者を一切受け入れることができないため、(多数のコロナ患者が押しかけない限り)病床の稼働率は大きく下がってしまう事がわかります。
コロナ禍でICUの稼働率も低下
続いてICUなど重症患者を受け入れる病床の稼働状況を確認します。
図表3をご覧ください。これはICUを保有する250病院を対象にして、コロナ患者受け入れ有無別にICU稼働率の推移(2月から5月)を見たものです。基本的な考え方は図表1と同じで、これをICUに特化しグラフにしてみました。
ICUも先ほどの一般病床と全く同じ傾向で、コロナ患者を受け入れた病院も、受け入れていなかった病院もほぼ同じような形でICUの稼働率が落ち込んでいます。受け入れあり(右列)では2月に平均63%だったのが5月には5割、受け入れなし(左列)ではそれぞれ平均69%と56%でした。