日本産婦人科学会がまとめた最新データによると、2018年、体外受精での生児獲得率は5.7%。諸外国と比べても際立って低い数値です。なぜ日本の体外受精の成績は低迷し続けているのか、産婦人科医の月花瑶子さんに聞きました――。
5.7%が示すことは……
2018年に行われた体外受精は、45万4893件。それに対して、実際に生まれた赤ちゃんは5万5499人です。総治療数に対する生児獲得率は、12.2%。「では冒頭の5.7%という衝撃的な数字はどこからきたのか」と首をかしげる人も多いでしょう。
5.7%と12.2%、同じ生児獲得率を表しているはずの数字に倍以上の開きがあるわけは、分母の違いにあります。5.7%は採卵回数を分母にしたとき、12.2%は採卵や移植のすべての治療周期を分母にした場合のデータなのです。
不妊治療にまつわる数字を読み解く知識を
「体外受精とは、卵巣から卵子を採取し、体の外で精子と受精させてから子宮に戻す治療です。ただ、採卵しても空胞だったり、変性していて受精しなかったり、受精しても途中で発育を止めてしまったりと、移植まで到達できない卵も少なくありません。そのため採卵を母数にするか、移植回数を母数にするか、あるいは採卵と移植をすべて合わせた総治療数を母数にするかで生児獲得率の数字の“見た目”は大きく変わってくるのです」
5.7%という数字だけをとらえて、不妊治療の最後の砦たる体外受精でも6%に満たない人しか赤ちゃんを抱けないのか、と暗澹とした気持ちになるのは早合点。不妊治療にまつわる数字を読み解くには、治療の前提についても知っておく必要があると言えるでしょう。