共用施設が使えないのに月2万円以上の管理費・共益費が徴収され続ける

一方で男性は、コロナ禍で浮かび上がってきたタワマンという居住形態の限界について指摘する。

「そもそもタワマンは昼間に全住民が在宅することを想定して造られていないので、ステイホームによってあらゆる場所がキャパオーバーになっている。共用施設の再開も未定だし、私は夏にも今の部屋を退去する予定です。私は賃貸だからよかったけど、買っちゃってる人は逃げるわけにもいかず、閉塞的な環境でご近所に気を使いながら生きていかなければならない。本当に気の毒です」

この男性のように、コロナ禍をきっかけに住んでいたタワマンを離れる人は少なくないようだ。都内のある不動産仲介業者は言う。

「タワマンの売りであるラウンジやジムなどの共用施設が閉鎖されたことは、売買市場よりも流動的な賃貸市場においては負の影響になっています。すでに入居している貸借人の間では、共用施設を使えないのに今までと同じだけ共益費を徴収されることに対する不満もあります。共用施設が充実している高級タワマンでは、管理費・共益費は月額2万円以上になるところもあるので、切実な問題。

そして、さらに困るのは、急に入居者に出ていかれた物件オーナーです。この時期に退去されてしまうと、新しい入居者はしばらく見つからないでしょうからね。ローンで物件を購入し、入居者からの賃料収入でその返済に回していたようなサラリーマンオーナーは、空室状態が続けばローンが払えなくなってしまいますよ」

大都市の街並み
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コロナ感染者発生の噂で始まった“犯人捜し”

タワマンの賃貸市場の雲行きが怪しくなれば、オーナーのなかには物件を手放さざるを得なくなる者も出てくることだろう。そうなれば、売買市場への影響も小さくないはずだ。

しかし、もっと悲惨なケースもある。マンションの住人に新型コロナの感染者が出てしまった場合だ。

では、実際に感染者が出たマンションでは何が起きたのか紹介しよう。東京・湾岸エリアにある某タワーマンションに住む40代の男性の証言。

「感染者が出たらしいという情報が、4月上旬に別の住民からLINEで回ってきた。その後、エントランスに、コロナ感染者が出たことを知らせる貼り紙が一時的に掲示されていました。これを機に、住民の間で“犯人捜し”が一斉に始まった。『先週、エレベーターで咳をしていた女性が○階で降りた』『○○号室のご主人はよく中国に出張していたらしい』などと、真偽不明の噂が飛び交いました。感染を恐れてマンションから一時的に避難した人もいます。さらに感染者の部屋番号を公開すべきと主張していた人もいました」