「余計な期待を持たせてはいけません」
目の前に貼られている『対応の心構え』の、
に該当するということなのでしょう。確かに正論かもしれませんが、では私はばっさり、「フリーランスの方は申請対象となっていません」とだけ言い放てばよかったのでしょうか。
実は5月22日の段階で、持続化給付金事業の最高責任者である梶山弘志経済産業大臣が定例記者会見において、フリーランスの人も給付金申請の対象者となるようできるだけ早く制度改正をしたいと明らかにしています。記者とのやり取りの様子は経産省のホームページに記載されているので、せめてその内容ぐらいは伝えてもいいでしょうかと社員に確認すると、
「いつから改正されるかまだ決まっていないんですから、オペレーターの側から案内して余計な期待を持たせてはいけません」
と、またクギを刺されてしまいました。
ネットに不慣れな人は情報集めも困難なはずだが…
規則改正の正式発表の直前でも、フリーランスの事業者は申請対象となるのかという問い合わせを、多くのオペレーターが受けていました。つまりそうした電話をかけてくる方々は、私が対応した予備校講師も含め、梶山大臣発言のことをまったく知らないわけです。
だとすると、オペレーターから「対象外」だと回答されれば、それっきり給付金申請を諦めるかもしれません。特にネットに不慣れな人は最新の情報を集めるのも困難です。自分にも門戸が開かれたことを知らないばかりに、今も苦境にあえいでいるフリーランスの方々は少なからずいるのではないでしょうか(私が電話を受けた予備校の先生、あのあと申請できてるかな……)。
ただ一方で、曖昧な情報を入電者に案内できないというコールセンター運営側が置かれた立場も、この業界に身を置いてきた者としては理解できるのです。ましてや多額のお金が絡む国の事業であり、今日明日の暮らしにも困っている方々を対象としているのですから、回答には厳格な正確性が求められるわけで。
そんな事情と入電者の生々しい声との板挟みの中、コールセンターのスタッフは日々、やり場のないもやもやした感情を抱え込んでいくのです……。(1月5日公開の第3回に続く)