トラブルを避けるために、負担ばかりが増える
ただ当然、中には不備箇所に気付いてもらえない入電者もいるわけで、そうなると結局オペレーターもお手上げになってしまい、「修正依頼の文面と書類を改めてごゆっくり確認していただけますでしょうか」と答えが出ないままの形での終話に持っていかざるを得ないのです。
書類が見えていることを明かすのを禁じられ、具体的な修正箇所をはっきり指摘できないのは、審査担当者でもないコールセンターの人間が迂闊に判断し、誤案内が起こるのを避けるためなのかもしれません。しかし入電者は解決を求めて電話をかけてくるのですから、リスクを恐れるよりも便宜を優先させることこそ寄り添った対応なのでは、と思うのですが……。
そして、何にも増して私が歯がゆく、また心苦しい思いをしたのは、いわゆるフリーランスとして働いている方々からの問い合わせを受けた時でした。
公立高校の元教師だという年配の男性からの問い合わせ
制度の運用開始当初、個人事業主として持続化給付金を申請できるのは、年間収入金額を『事業所得』として確定申告した人に限られていました。今年になってからの収入減少条件を満たしていても、(雇用契約ではなく)業務委任契約に基づいて音楽教室や学習塾で教えている講師や、請負契約で完成品を納めているプログラマーやエンジニアなどが年間収入を『雑所得』、もしくは『給与所得』で確定申告していると、事実上の個人事業主であっても持続化給付金の申請対象者に含まれていなかったのです。
その不公平さへの不満や批判が中小企業庁に多く寄せられたのか、対象者要件は途中で改められます。6月26日にフリーランスの個人事業主も申請できる旨が公式に発表され、同29日から申請可能となったのです。
6月中にフリーランスでも申請可能となる動きがあることは、コールセンターに事前に知らされていました。そして情報解禁されればすぐ問い合わせに答えられるよう、公式発表に先立ち、フリーランス申請の概要に関するレクチャーもセンター内で行われていたのです。
でもその内容をオペレーターが入電者に案内できるのは、あくまで公式発表が行われた後。発表されるまでは、口外を固く禁じられていたのです。
解禁日がいよいよ目前に迫っていた6月下旬のある午後、私は公立高校の元教師だという年配の男性からの問い合わせを受けました。