ピーク時には順番待ちが100人を超える時間帯もあった

入電者とのやりとりの流れがひと通り理解できたら、いよいよ実際の受電です。

持続化給付金の公式ホームページには、〈申請内容に不備等が無ければ、通常2週間程度で事務局名義にて申請された銀行口座に振込を行います〉と明記されています。ところが、5月の受付開始当初から給付金事務局の見込みをはるかに上回る申請数があったため、給付が大幅に遅れていることが各メディアで報じられていました。

さらに相談窓口であるコールセンターにも電話が殺到していて、オペレーターまでなかなかつながらない状況であることも、新人研修で伝えられています。私が配属された時期はそれでも少し落ち着いてきているようでしたが、最も慌ただしかった5月の申請受付開始当初は、電話をかけてもオペレーターまでたどりつかず順番待ちをしている方々の数が、渋谷のセンターだけで100人を超える時間帯もあったとか。

ここで、ある歪みが生まれてしまいます。

照会をしないのは「苦肉の策」と言うけれど…

私たちは、入電者から審査の進捗状況や給付時期の見込みについての質問があった場合、申請日から数えてまだ2週間未満の方ならば、個々の状況を照会することもなく、まずは、「通常、給付までには2週間程度いただいております。恐れ入りますがもう少々お待ちいただけますでしょうか」と答えることになっていました。

相手がそれですんなり納得してくれればよし。でも何人かに一人は、なかなか電話を切ってくれません。そうした場合のみ、リーダーやスーパーバイザーといった管理者が専用データベースで入電者の審査状況を調べ、オペレーターが回答するという段取りでした。

とはいっても、我々は審査部門ではないので照会できる情報が限られている上、コールセンター側から入電者に伝えることが許されているフレーズは、極めて限定されています。だから照会したところでほとんどの場合、結局は同じように「恐れ入りますがもう少々お待ちいただけますでしょうか」としか返すことができません。それでも入電者は照会作業をひとつ挟めば、とりあえず自分の個別状況を調べてくれたという事実で気持ちが収まり、電話を切ってくれるのです。

申請から2週間以内で審査状況が進展することは現実的にほとんどあり得ないので、こうしたルールは確かに理にかなってはいます。研修で講師を務めていた社員によれば、コールセンターに電話がつながらないとの批判を踏まえ、入電者一人あたりにかかる時間をできる限り短縮し、なるべく多くの相談者や申請者がオペレーターと直接会話できる機会を作るための苦肉の策なのだといいます。

けれど一日でも早い受給を必要としているからこそ、自分の審査状況を尋ねてくるわけです。入電者と直接言葉を交わすオペレーターとしてはどうしても、相手の疑問や不安にきちんと応えていない罪悪感にさいなまれてしまいます。