具体的なマニュアルはなく、資料はサイトのプリントアウト

職場は、派遣先であるコールセンター運営会社の本社ビル内の2フロアを占有していました。

新人研修の日数は4日間。詳細な専用マニュアルがあるわけではなく、持続化給付金のホームページのプリントアウトと、電話応対フローチャートを中心に進められました。わずかな日数しか取れないだけに体系立てて丁寧に教え込むわけではなく、制度内容や電話応対ルールを駆け足でざっくりとさらうだけです。

コールセンターには、私の所属先も含めた複数の派遣会社からそれぞれオペレーターと、管理者であるリーダー、スーパーバイザーが送り込まれています。それに加えて派遣会社からのスタッフとは別に、フロア全体の監督、問い合わせがあった申請者のデータ照会、持続化給付金事務局との連絡などを担うコールセンター運営会社の社員も控えていて、我々のいるフロアだけでも総勢150名超の人間が働いているようです。

この運営会社は札幌、多摩、渋谷、市川、横浜、神戸、大分と全国7拠点に持続化給付金のコールセンターを構えているのですが、渋谷の規模が最大とのこと。

オペレーターからの質問を受けたり、入電者とのやりとりがこじれて「責任者を出せ!」と要望があった際に、電話を替わったりするのがリーダーで、オペレーター8人に1名程度の割合で配されます。

ヘッドセットと電話
写真=iStock.com/Chainarong Prasertthai
※写真はイメージです

その上にいるのがスーパーバイザー。各社に毎日2~4人がいて、リーダー陣でもわからない疑問に答えたり、自分の派遣会社からのスタッフ全体をまとめて、派遣先とのパイプ役などを務めています。

この3つのカテゴリーで派遣会社ごとにピラミッド型の組織を作り、フロア内で業務に就くエリアも各社単位で決められています。

『対応の心構え』にあった業務の本質と問題

そして、のちに他の派遣会社の人たちとも言葉を交わすようになってわかったのですが、渋谷のコールセンターに配属されたスタッフの時給は、オペレーターが1300~1500円程度、リーダーが1600~1800円程度、スーパーバイザーが2100~2300円程度のようでした。

座学の研修が終了すると、1日だけOJTの場が設けられました。まずは、業務中の先輩オペレーターの対応の録音音声をモニターし、実際にどんな内容の入電があり、どう対応しているのかを把握します。 モニタリングしながらふと自分の前にあるボードに目をやると、こんな『対応の心構え』を印字した紙が貼られていることに、改めて気づきました。

・お困りの気持ちに配慮した、寄り添った対応をする(但し、回答自体は決められた範囲)
・制度を正しく理解し、お客様のほしい情報を正確・ていねいに提供する
Web/申請のガイダンス/FAQ等、情報が確実なもの以外、お伝えしてはいけません!

何か特別なことが書かれているわけではありません。しかしその言葉のひとつひとつが、自分の業務の本質と問題を恐ろしいほど射抜いていることに、やがて私は気づかされるのでした……。