「小林化工による薬の自主回収は、この4年間で5件目」
12月19日付読売新聞の社説は「小林化工は薬を自主回収しているが、問題は極めて重大だ。病気を治す薬で命が脅かされることなど、あっていいはずがない」と訴え、経緯と問題点を書いた後、中盤でこう指摘している。
「小林化工による薬の自主回収は、この4年間で5件目だ。昨年10月には、胃潰瘍などの治療薬に発がん性物質が含まれていたことが判明した。今回と同様、厚労省の定めた3段階の危険度で、最も重大なケースに該当している」
「この時に、事実関係をしっかりと調査し、原因を究明して、再発防止に取り組んだのか。教訓を生かしたとは到底思えない」
ミスを繰り返す。その背景には組織的かつ構造的な問題が潜んでいる。それを行政や警察が調査や捜査によって明らかにしなければならない。その薬害の根本的な原因を探る第三者機関の介入も必要である。
最後に読売社説は「医薬品の自主回収は近年、増加傾向にある。薬への信頼が損なわれることがないよう、新薬を扱う製薬会社も含めて、製造工程や検査体制を改めて点検し、安全の確保に努めることが大切だ」と主張する。
失うのは「薬への信頼」だけではない。私たちの大切な健康も損なわれる。
ひとつのずさんな企業のせいで、業界全体の信頼が揺らぎつつある
12月20日付の産経新聞の社説(主張)も「睡眠剤混入」を取り上げ、見出しで「信用の失墜は一瞬である」と指摘し、冒頭部分でこう書く。
「事故原因が明らかになるにつれ、そのずさんさにはあきれ返るばかりだ」
その通りだ。ずさん以外の何ものでもない。
さらに産経社説はジェネリック医薬品の信頼性について言及する。
「ジェネリック医薬品とは、厚労省の認可を得て製造され、新薬と同等の効き目が保証されたものだ。研究開発費を伴わないため比較的安価で流通する」
「『安かろう悪かろう』の風評を覆して信頼を得るため業界全体で取り組んできた結果、今年9月時点で政府目標の80%に近い78.3%まで使用割合を拡大させた」
「だがそうして得た信用も、一つの事故で逆風にさらされ、いともたやすく水泡に帰す。厚労省と業界団体は一丸となって各社の管理体制を再確認し、教育を徹底させてほしい」
医療費の高止まりを是正するうえで、ジェネリック薬の存在は重要だ。ひとつのずさんな企業のせいで、業界全体の信頼が揺らぎつつある。薬害について厳しく対応することが、信頼を取り戻す第一歩だろう。