警察が刑事事件として強制捜査する必要がある

福井県あわら市の製薬会社「小林化工」が製造した爪水虫の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入していた問題で、厚生労働省と福井県、それに医薬品を承認審査する医薬品医療機器総合機構(PMDA)が12月21日、医薬品医療機器法に基づいて小林化工を立ち入り調査した。

睡眠剤混入問題で、立ち入り調査のため製薬会社「小林化工」に入る厚生労働省や県などの職員=2020年12月21日午前、福井県あわら市
写真=時事通信フォト
睡眠剤混入問題で、立ち入り調査のため製薬会社「小林化工」に入る厚生労働省や県などの職員=2020年12月21日午前、福井県あわら市

小林化工によると、意識障害などの健康被害は150件を超え、飲んだ70代女性と80代男性が死亡した。服用者が車を運転中に意識を失う交通事故も20件以上起きている。

爪水虫の薬に睡眠剤を混入させるミスは、人の健康と命を預かる製薬会社として致命的である。任意の行政調査だけではなく、警察が刑事事件として強制捜査する必要があるだろう。

製造の手順や品質検査がことごとく無視されていた

問題の薬は「イトラコナゾール錠50『MEEK』」。市販薬ではなく、医師の処方箋がなければ購入できない薬だ。今年9月~12月に出荷した9万錠に1錠あたり5ミリグラムの睡眠導入剤成分「リルマザホン塩酸塩水和物」が混入していた。1回あたりの最大投与量の2.5倍になり、意識がもうろうとする危険性が高い。

小林化工は1961年に設立された。安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の製造や販売を行い、アレルギー性疾患の治療薬や抗生物質製剤を中心に扱っている。会社の規模は今年3月期の売上高が370億円、従業員数が800人ほどと小さい。先発医薬品を生産する大手の製薬会社とは違う。

目減りした原料を追加する作業で、担当者が成分の入った容器を取り違えた。一見、単純なミスのように思われるが、追加の作業は厚労省の承認を得ていなかった。2人一組で確認するという社内規定にも従わず、さらに品質の検査で異物の混入が疑われたにもかかわらず、そのまま出荷されていた。

厚労省が認めた製造の手順やダブルチェック、品質検査がことごとく無視されていた。開いた口がふさがらない。