「平均」はボリュームゾーンじゃない
しかし、こうして見ると実体経済と株価は、思った以上に連動していないことがわかります。
よく考えたら、株価は「“個々の企業”の事業内容」への期待や評価で上下するものであり、GDPや経済成長率みたいな「“日本全体”を見通す指標」の良しあしと、必ずしもリンクするものではありません。だって物流やオンライン系など、コロナ不況下だからこそ輝いた業種もあるわけですから。
「いやいや、株価から日本全体の景気動向を見る手段もあるじゃないか。日経平均株価を見ればいい」――こう考える人もいるでしょう。しかし実は、その日経平均株価こそが、実体経済をきちんと反映していない可能性のある指標なのです。
そう、確かに私たちは、実体経済と株価の乖離を語る際、しばしば「日経平均株価」を引き合いに出します。しかしこの「平均」というやつが相当な食わせ物であることに、みんなあまり気づいていません。
私たちは平均と聞くと、「世の人々は、みんな大体これくらい」というボリュームゾーンをイメージしがちですが、実はそうではないことが、かなり多いのです。
たとえば「平均年収400万円」という数字があるとすると、その数字は、ひょっとすると年収200万円のグループと600万円のグループを足して2で割っているだけかもしれません。この場合の平均値は、ボリュームゾーンではない。単なる「格差の隠れみの」です。そして日経平均株価とは、まさにその格差の温床なのです。