『PRESIDENT WOMAN プレミア』21年春号で、「商いの支払いが集中する五十日」「春闘が行われる2~3月」など「ビジネスにまつわる数字」の話を歳時記的に教えてくれた代々木ゼミナールの人気講師・蔭山克秀先生。4月の入社式・入学式にはじまり、12月の仕事納めまで、知っているだけで面白い雑学をWEBでもご紹介。ビジネストークネタにも使えます——。
通学路の桜並木を眺める女子中学生
写真=iStock.com/paylessimages
※写真はイメージです

4月入社は江戸時代の年貢が起源

4月は入社式・入学式のシーズン。4月のイメージとして私たち日本人の頭にパッと浮かぶのは、希望に胸をふくらませた初々しい新人と桜の花びらが舞う光景です。そもそも、なぜ日本では、会社や学校のスタートが4月なのでしょうか? それは政府の会計年度のスタートが4月1日だからといわれています。

会計年度の初日が4月1日になったのは、1886年(明治19年)です。4月という中途半端な時期である理由として、よくいわれるのが「農家の金納」です。当時の日本は、江戸時代の封建制の名残から、主な納税者は稲作農家でした。江戸時代なら年貢は米で納める現物納でしたが、明治からは現金で納める金納に変わります。

そうすると「まず農家が秋に米を収穫→米を現金に換えて納税→政府が現金を徴収して予算編成」という手順になるため、どうしても時間がかかってしまう。そのせいで、会計年度のスタートが遅くなった、という理由です。確かにそういう理由なら、入社式や入学式が4月なのもうなずけます。企業は政府のつくった税体系に縛られますし、学校は政府から運営資金を調達するケースが多いですからね。

ちなみに、世界で4月入学の国は日本やインドなどごく少数の国だけで、多くの国では9月入学です。さらにいうと、「入社式」などという奇妙な風習が、社会全体に定着している国は日本ぐらいです。これは就職に対する意識の違いからくるものといえるでしょう。日本以外の国では、就職とは「職業に就く(=職業人になる)」ことに対し、日本での就職は「会社に入る」。つまり、これはプロになるか、村人になるかの違いということですね。