「一律でなくてもいい」文科省会見で風向きが変わった

強い追い風になったのは、5月11日の文部科学省の会見でした。「学校の情報環境整備に関する説明会」で、文部科学省の担当課長が「すべての児童・生徒の家庭にオンライン環境が整っていなくても、一律にやる必要はない。できるところからどんどん推進してほしい」と言ってくれた。

教育の現場は、全員に同じ環境が整わないと一歩を踏み出さないところがあって、通常であればオンライン教育も、1人でも家庭に端末がない子、Wi-Fi環境がない子がいれば、「やめよう」となります。そこを、「緊急時なので、一律にそろわなくてもいい」と文科省が明言したことは、非常に大きかったのです。

YouTube、文部科学省「GIGAスクール」ch、「2020年5月11日 学校の情報環境整備に関する説明会」より
YouTube、文部科学省「GIGAスクール」ch、「2020年5月11日 学校の情報環境整備に関する説明会」より

また、通常は、文科省からの通達は現場の教員にはなかなか届きません。ホームページには掲載されますが、それをまめにチェックする教員はあまりおらず、文部科学省から都道府県の教育委員会、市区町村の教育委員会、各学校長に伝わって現場にという流れですから、1カ月くらいのタイムラグが出ます。しかしこの時の会見はYouTubeで公開され、情報は文部科学省から現場にダイレクトに伝わりました。そうすると、「文科省がこう言っていますよ」と現場から声を上げることができます。上からと下からの挟み撃ちで、各地の教育委員会の動きが加速したのだと思います。これもオンラインの効果ですよね。ここから世論が一気に変わってきました。

やってみてわかったオンラインの良さ

私の学校では5月15日からZoomで朝の会を始めることができるようになりました。最初の朝の会は参加率が95%で、欠席した人は「忘れていた」という理由でしたから、ほぼ100%の参加と言ってよいと思います。長時間だと難しいでしょうが、朝の40分間だったので、何とか参加できたのでしょう。

庄子さんが、休校期間中に実施したZoomの朝の会で、子どもたちと共有した「きまり」(写真=本人提供)
庄子さんが、休校期間中に実施したZoomの朝の会で、子どもたちと共有した「きまり」(写真=本人提供)

やってよかったことは、一番は子どもたちの笑顔に会えたこと。そして、子どもたちの良いところを見つけられるということも新たな発見でした。対面の授業では1日に一度も発言しない子がいることもありますが、オンラインの方が話しやすいという子もいます。チャット機能を使えば、子どもたち全員を認めることができます。

オンライン朝の会の後はそのまま「オンライン自習室」にしました。希望する子どもはつないだままで課題に取り組んだりします。特に何かを教えたりはせず、私もほかの作業をしたりしていましたが、質問があればすぐに声を掛けてもらえる状態にしました。それだけで、前向きに課題に取り組めるようになる子もいます。

もちろんオンラインが得意な先生と苦手な先生がいますので、得意な先生がサポートに入りました。そうすると、他のクラスの様子を見ることができました。これも大きなメリットでした。教員を何十年もやっている人でも、他の教員が朝の会をどのようにしているかは見たことがないと思います。

結果的には、子どもも教員も予想していた以上に楽しく使うことができました。この12月にはまた感染者数が増加してきたので、保護者会を中止にしている学校もあるようですが、私の学校ではオンラインで保護者会を行いました。