それは、人間の本性に反してないか?
ただし、オンラインが悪いわけではなく目的によって向き不向きがあるだけです。相手の年齢や立場、相手との関係、仕事の状況など、オンでいくかオフでいくかを決める条件はいくつもある。その判断は何で決まるか。一言でいってしまえば、センスです。
私はビジネスについて考えるとき、「それが人間の本性に適っているか」を重視します。たとえば、ステイホームの時期に流行ったオンライン飲み会。私の周りにも「オンライン飲み会やってるよ」という人がいて、誘われることもありました。
しかし半年もたたないうちにすっかり聞かれなくなったのは、オンライン飲み会が人間の本性に反しているからです。あの時期はステイホームが徹底されて「飲み会もダメ」となりました。しかし人間の本性として、社交の場は必要です。家の外で飲み会が開けないなら、せめてリモートでもとオンライン飲み会が流行ったわけです。
ところが、ステイホームの縛りが解かれると、「やっぱり顔をつき合わせてお酒を飲みたいね」となります。これが人間の本性です。もちろん、遠いところに住んでいる人や外出が難しい人との間では継続されるはずです。そういう条件の下では、オンライン飲み会は有力なオプションが増えたことになります。
その一方で、オンライン会議が定着しつつあるのは、人間には「面倒くさいことを避けたがる」という本性があるからです。若い人と話していたら、スマホをいじりながら「このアプリは使い勝手が悪い」と不満を漏らしました。「どこが?」と尋ねたら、他のアプリに比べて画面のボタンを1回多く押さなくてはいけないからダメだ、というのです。
たかだか指先の動きだけです。それでも人間は、面倒なことを嫌がる。これは強烈な本性です。リアルな会議のために移動するのは面倒くさい、できれば動きたくない、となるのは自然な話です。
「この仕事はオンにするかオフにするか」という判断も、人間の本性に照らして考えてみると、答えを見つけやすいかもしれません。そのような基本的な考え方も含めて、ビジネスセンスの差になるのでしょう。
後編では、このセンスについて私の考えを述べたいと思います。(続く)