そんな横浜のオシャレな雰囲気を表現する『ブルー・ライト・ヨコハマ』は、8ビートのロックなリズムに、金管楽器を使用したジャズ要素を加味。伴奏の雰囲気は洋楽です。ハイカラな演奏をバックに、いしだあゆみの歌が艶っぽい。「まちのあかりがン、とてもきれいねン」と日本の小唄みたいに歌っています。ズバリ、この曲のコンセプトは和と洋のコラボ。和洋折衷なんです。海外のいいところと日本のいいところを、いかに上手に結びつけるか。日本人相手に商売をする、筒美京平のビジネスマン的な本質が表れています。

このころの日本は高度経済成長期。キラキラした希望だらけの時代です。日本企業や商品がどんどん世界に進出して、日本の精密な技術力が海外にアダプテーションしていく。そういった“ジャパン・アズ・ナンバーワン”のBGMとしても、ビジネス的な示唆に富む曲です。

岩崎宏美・郷ひろみにディスコ音楽を

和と洋のコラボなど、筒美京平は異種混合、ミックスする力に長けた人でした。1つの例として、岩崎宏美の『ロマンス』(75年)が挙げられます。自身が手掛けた曲の中でも、売り上げランキング第5位という大ヒット作。作詞は阿久悠です。

この曲で、筒美京平の類いまれなミックス力がいかんなく発揮されています。抜群に歌が上手い新人の岩崎宏美に、歌唱力がものをいうバラードではなく、ディスコミュージックを与えました。それがこの『ロマンス』。ディスコミュージックは、日本では78年にヒットした映画『サタデー・ナイト・フィーバー』に使われていたような音楽で、バスドラムの四つ打ち、ドンドンドンドンというシンプルなリズムに乗せた曲調です。

このディスコと歌唱力に長けた少女とのマリアージュは、見事に大ヒットしました。ディスコなんて歌唱力はいらないのでは、と思われがちなジャンルですから、非常に面白い組み合わせですよね。

ここから学ぶことは、ビジネスにおける異種混合、イノベーションの大切さ。新しいアイデアは、既存のものとの組み合わせで生まれるとよく言われますが、何をどう組み合わせるかセンスが問われます。ものによっては、大ブレークを起こすポテンシャルを持っているのです。

同じく70年代でもう一曲。少々マニアックですが、郷ひろみ『恋の弱味』(76年)は隠れた名曲です。私に言わせれば、筒美京平の中でナンバーワンの曲で、読者の方にもぜひ聴いてほしい。