ヘイトクライムを抑止する政府の努力

社会に人種主義的な動きが起こらないようにするひとつの方策として、イタリア政府が発表するコロナ被害のデータには外国人の割合は明記されていない。感染者も死者もすべて合計でのみ報じられている。「外国人のせいで医療崩壊が起こった」「外国人がコロナを蔓延させている」などの臆測をもたせないためだ。

しかし、現実問題として、第1波でもっとも被害の大きかったロンバルディア州の州都・ミラノの人口の20.1%、つまり5人に1人は外国人であり、例えばコロナ対応の中心となったミラノ市内のサッコ病院の救急外来は、コロナ以前から常にほとんど外国人である。というのは、イタリアは人道を尊重し不法滞在者であっても救急外来に行けば無料で治療を受けることができるからだ。もちろん、コロナの治療も同様。

前述のように公式には数字が出ていないものの、医師でありイタリア保険省・保健委員会の議長フランコ・ロカテッリ氏は「コロナ感染者の30%は外国人だ」と日刊紙「Libero」(7月17日付)の取材で認めている。9月18日付のネットニュースサイト「Genova24」でも「ジェノバの旧市街における感染者の半数は外国人だ」とのリグーリア州知事のコメントを載せている。

カルカノさんが指摘するように、イタリアでアメリカやフランス、他の欧州国のようなヘイトクライムが発生しないのは、外国人と共存してきた歴史と、現政府がコロナによるストレスのはけ口を外国人へ向けさせないようにしている努力の結果だというのは正しいだろう。