イタリアではあまり聞かないアジア人攻撃
9月27日、日本人ジャズピアニストの海野雅威さんがニューヨーク市内の地下鉄の駅で若者グループから暴行を受け重傷を負う事件が発生した。新型コロナの蔓延を契機として、アメリカではアジア系に対する人種差別的な暴行などの事件が増えており、同事件の犯人たちも海野さんに対し「チャイニーズ」などと叫びながら襲い掛かったといわれている。
また、フランスでもアジア人差別を煽るような動きがあった。11月1日付の日刊紙「ル・モンド」によると10月下旬、ツイッターに「今日で漫画はやめる。アジア人狩りだ」などとと呼びかける書き込みがあり、警察も警戒感を高めた。実際、今年初めの第1波の時にもフランスではアジア人に対する嫌がらせが起こっており、今回は100人の国会議員がこの動きに反対する連名書簡を発表した。
ゆえに「イタリアでも同様の動きがあるのではないか」との心配の声が筆者の元にも寄せられるのだが、今のところ新聞やテレビなどの大メディアがアジア人への攻撃を報じたのを目にしたことはない。
現在、連立与党を組む市民政党「五つの星運動」で2013年から2018年までロンバルディア州評議会の報道担当を務めたシルバーナ・カルカノさんは語る。「私たちイタリア人は人種差別主義者ではないと思いますが、現政府がコロナによる経済的な困難を解決する手段を外国人差別に向けさせない努力をしていることも大きい。ファシズムの時代はイタリアにとって恥ずべき残念なことでしたが、イタリアの歴史は常に他人から侵略を受け、暴力や彼らの要求に苦しんできたのです。結果としてここにはギリシャやオーストリア・ハンガリー、ブルボン王朝などの文化が混在しています」
一方でカルカノさんはこうも語る。「現政府が失業問題を解決できないと、次の選挙では人種差別を助長することで利権を持とうとする人々に負けてしまうかもしれません。私自身は非人種主義的な政府が続くことを祈っていますが……」