心身のアンチエイジングにも直結
成長ホルモンは脂肪の分解、骨密度の増加、筋肉の発達、肌のターンオーバーの促進に関係するが、それだけではなく、精神面にもさまざまな影響を与えることがわかっている。
成長ホルモンは脳の下垂体から分泌されるのだが、不足すると、疲れやすく、集中力が続かなくなり、孤独感を感じ、記憶力の低下を感じ、イライラしたり落ち込んだりして何もやる気が出なくなってしまう。
若々しい肌と体形をキープし、充実感に満ちて生き生きと仕事をこなし、輝くような人生を送りたいなら、成長ホルモンは欠かせない。そして、一日の中で最も成長ホルモンが分泌されるのは、入眠後、1回目に現れる深い眠りステージ3のノンレム睡眠時なので、睡眠の質の向上はアンチエイジングにも直結しているのだ。
深いノンレム睡眠が認知症のリスクを下げる
米国ロチェスター大学医療センターの研究チームは、老廃物を排出するリンパ系が存在しない脳において、アルツハイマー病やパーキンソン病に関係する有害なタンパク質を排出する「グリンパティック系」というシステムが存在することを有力な科学雑誌「サイエンス」に発表し、大きな話題となった。
睡眠中に神経伝達物質のノルアドレナリンが減少すると、脳内の神経細胞(ニューロン)以外の細胞であるグリア細胞(ニューロンを補佐する細胞)が約60%縮小し、細胞の間隔が拡がる。すると、脳脊髄液の流れがスムーズになり、まるでリンパ管のように有害タンパク質を洗い流して脳外へ排出するのだ。
グリンパティック系が最も効率的に働くのは深いノンレム睡眠時で、昼間の10〜20倍の老廃物を排出すると言われている。
そのため、長時間の睡眠をとったとしても睡眠の質が悪く、深いノンレム睡眠が現れなければ老廃物は排出されない。逆に、睡眠の質を改善し、深いノンレム睡眠が現れるようになれば、脳が清掃され、アルツハイマー型認知症のリスクを下げることができるのだ。