人間は、睡眠中も技能の習得をしている

体を動かしていない睡眠中に、脳が独自に技能の習得を行っていることが、ハーバード大学の研究によって明らかになった。

前野博之『成功する人ほど良く寝ている』(講談社+α新書)
前野博之『成功する人ほどよく寝ている』(講談社+α新書)

右利きの人を集め、ふたつのグループに分かれてもらい、左手を使ってキーボードで数字を打ち込む練習をしてもらう。ひとつのグループは午前中に練習し、当日の夜にテストを受ける。もうひとつのグループは夜に練習し、8時間寝てから翌朝にテストを受けるようにした。

練習からテストまでは、それぞれ12時間の間隔を空けているが、8時間寝たグループは、当日にテストを受けたグループと比較して、数字を打ち込むスピードが20%上昇し、正確性も35%上昇した。さらに、当日テストを受けたグループも8時間睡眠後のテストでは同じように成績が向上したのだ。

つまり、脳は睡眠中も練習を続けており、これはキーボードのタイピングだけではなく、各種スポーツ、職人の技術、運転や操縦の技術でも変わらない。楽器を練習中に何回もミスをして上手く弾けない箇所があっても、睡眠をとった次の日には、なぜか弾けるようになっていたという経験をされている人も多いだろう。これも同じしくみによるものだ。

感情が抑制できてカッとならない

睡眠不足の状態だとイライラするという人も多いと思うが、その理由についてカリフォルニア大学で研究が行われた。

18〜30歳の健康な男女26人を対象にMRIで脳をスキャンした結果、睡眠不足の状態になると、怒りの感情を生み出す脳の「桃体」の反応が60%も増幅していた。

その上、合理性・論理性・意思決定を司り、衝動を抑制する「前頭前皮質」と怒りを生み出す「桃体」のつながりが弱まってしまうので、原始的な感情を抑制できなくなってしまうことも明らかになった。

職場でイライラしたり、「ついカッとなって」感情を爆発させてしまうと、チームワークが乱れてしまう。十分な睡眠をとって感情を抑制し、理性を保つことが、あなたが現在抱えているプロジェクトを成功へ導く近道なのだ。