AIが人類の生活や安全を脅かす日は来るのだろうか。AIに詳しい作家の川添愛氏はAIの裏側にある“人間の側の問題”を指摘し「機械が言葉を扱う能力を正しく評価する必要がある」という——。(第1回/全2回)

※本稿は、川添愛『ヒトの言葉 機械の言葉』(角川新書)の一部を再編集したものです。

脳の形・人工知能のコンセプト
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「人間の言葉」を話せるようになったか

普段の生活の中で、機械が発する言葉を聞くのは珍しくありません。

留守番電話の「お預かりしているメッセージは『いっ』件です」や、駅の自動券売機でおつりが出たときにしつこく言われる「おつりをお取りください」などは、よく耳にする機械の言葉です。しかし、留守電や券売機の発する言葉を聞いて、「機械が自ら言葉を話している」と思う人はほとんどいないのではないでしょうか。

他方、スマートフォンやスマートスピーカーなどが発する言葉はどうでしょう。

そういった機器は現在、AI(人工知能)技術の発達のおかげで、私たちが発する音声をほぼ正確に認識し、私たちの話す内容に応じてかなり柔軟な反応をするようになっています。まるで人間がするような応答を聞いて、「AIは人間並みに言葉を理解し、話せるようになったのだ」と思っている人も多いかもしれません。そういった応答をする機械が人間に近い姿をしている場合は、さらにそのような印象は強まることでしょう。

第三次人工知能ブームが始まって以来、たびたびAIの脅威が囁かれるようになりましたが、そのきっかけが「AIの言葉」であることも少なくありません。2016年には、香港の企業が開発したソフィアというロボットが「人類を滅ぼす」と発言して話題になりました。