AIにはどこまで可能性があるのか。作家の川添愛氏は「実は人間が普段なにげなくやっている行為は非常に複雑。それをAIに対して適切に定義することは非常に難しい」という——。(第2回/全2回)

※本稿は、川添愛『ヒトの言葉 機械の言葉』(角川新書)の一部を再編集したものです。

未来の技術:黒い義手
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「定義された課題」以外はこなせない

AIについてよく尋ねられる質問に、「AIには○○ができますか?」というものがあります。

「AIは言葉を理解できますか?」「AIは感情を持つことができますか?」「AIには人間のような思考ができますか?」「AIに哲学はできますか?」……などなど、挙げていけばきりがありません。しかし、こういったことについて考える前に、まずはっきりさせておかなくてはならないことがあります。

それは、「その○○は、どんな仕事として定義できるのか?」ということです。

前回の記事でも触れたように、今のAIの中身は「数(の並び)を入力したら、数(の並び)を出力する関数」です。よって、AIを開発するときには、先に「何を入力として、何を出力するか」、また「入力と出力をどんな数の並びとして表すか」を決めなくてはなりません。

つまり、「AIにさせる課題(タスク)を定義しなくてはならない」ということです。

今のAIの開発に盛んに使われている深層学習はとても強力な方法なので、入力と出力をきちんと定義することができ、学習に使える良質のデータが大量にそろえば、さまざまな課題を高い精度で行える可能性があります。しかし、ただ「こんなことができるようになってほしいなあ」と思うだけではAIは作れません。

つまり「言葉を理解できるAI」「感情を持つAI」のような漠然としたイメージを、漠然としたまま実現することはできないわけです。