大阪市民は判断に迷い、翻弄され続けた。責任は政治にある

朝日社説は続けて書く。

「残念だったのは、これだけの労力と費用をかけながら、地方自治の本質に迫る議論が深まらなかったことだ。行政への参加を住民にどう促し、地域の特性に応じた街づくりを、いかに進めるかという課題である」
「人口270万人余の大阪市に対し、新設予定だった四つの特別区は約60万~75万人。区長と区議会議員は選挙で決まり、独自の制度を設けたり、施策を講じたりできるようになることが利点の一つとされていた」
「きめ細かく施策を展開するという考えも、都構想とともにお蔵入りということではあるまい。『大阪市』の下でどう工夫を凝らすか。引き続き検討してもらいたい」

労力と費用だけではない。少なくとも5年以上の時間が費やされた。その間、大阪市民は「大阪市をなくすべきか。それとも存続させるべきか」と判断に迷い、翻弄され続けた。責任は政治にある。その責任を取る意味でも朝日社説が主張するように大阪市長や大阪府知事、そして維新には、工夫を凝らしてほしい。

「大阪市民の結論は示されたと受け止めるべきだ」と産経社説

同じく11月2日付の産経新聞の社説(主張)は「平成27年の前回に続く否定である。大阪市民の結論は示されたと受け止めるべきだ」と訴え、こう分析する。

「都構想は大阪維新の会が主導し、大阪の自民党などが反対してきた。賛成派と反対派の言い分は正面から対立し、都構想の長所と短所は分かりにくかった」
「住み慣れた市をなくすことへの抵抗は強かったとみられる。大きな権限を持つ政令指定都市であればなおさらだ。住民サービスや財政面での先行き不透明感もふくらんだのだろう」

「分かりにくい都構想の長所と短所」「強い抵抗」「先行き不透明感」。どれも今回の住民投票が政治的思惑を優先したことに由来する。大阪市民という「草の根」から生まれた住民投票であれば、こうはならなかったはずだ。