「二郎系」のコンセプトとカップ麺の“親和性”
二郎系カップ麺が多数発売されるなか、商品の味はかぶってこないのか。
実は、「ラーメン二郎」にインスパイアされているといっても、その全てが「二郎」のラーメンを完全に模しているというわけではない。「二郎」の特徴である「ニンニクが効いたガッツリ系」「量が多くて脂っこい」「醤油が強い」などのキーワードを押さえながら、商品によってアレンジを加えているのである。
二郎系カップ麺の火付け役のひとつである「日清のどん兵衛マシマシ篇 ガチ豚ニンニク」は、「どん兵衛」のうどんを二郎風にアレンジした商品。現在発売中の「日清焼そばU.F.O.大盛 汁なし豚らーめん ニンニク背脂醤油味」は焼そばをアレンジした商品だ。「日清ラ王」や「マルちゃん正麺」など麺に特徴のあるブランドも参入し、それぞれの特徴を生かしながら二郎系にアレンジをして商品化しているのだ。
これだけ種類が増えているのは、「二郎」というコンセプトの“わかりやすさ”がカップ麺のアレンジにハマりやすく、商品開発しやすかったことが考えられる。醤油、塩、味噌、豚骨などの基本の味に次ぐ新味として二郎系を採用することで、そのブランドのファンへの目先替えができるとともに、二郎ファンにもアピールできるのだ。
コンビニ各社も「マシマシ」を再現
さらにカップ麺だけではなく、コンビニで発売しているチルド麺にもその動きは顕著だ。
セブン-イレブンでは「中華蕎麦とみ田監修 ワシワシ食べる豚ラーメン」が人気だ。松戸の大人気店「中華蕎麦とみ田」が監修している本格二郎系で、ゴワゴワの極太麺に大量の野菜、アブラニンニク玉がトッピングされており、強烈なパンチを生み出す。後半にお酢をかけて食べるとおいしい。
ファミリーマートでは「大盛にんにく醤油ラーメン」が発売中だ。小麦ブラン(小麦の外皮)入りの極太麺で、小麦の香りと本格感を演出。栄養価も高いので、健康にも訴えかける。そのほか、東北沢の二郎系の人気店「千里眼」監修の「千里眼監修 濃厚マシマシラーメン(ニンニク醤油)」も人気だ。ローソンでも「にんにく豚醤油ラーメン」が発売されている。
生麺や野菜をそのまま使えるので、カップ麺以上に強いスープに合わせやすく、食べた時の満足感も高い。価格は各社500円台と高額だが、クオリティとしては十分すぎるレベルである。
消費者側にも二郎風アレンジの動きはある。
B級グルメ研究家の野島氏の著書『世界一美味しい「どん二郎」の作り方』(宝島社)が火付け役となり、カップ麺に大盛の野菜やニンニクを加えて二郎系ラーメンを自作するアレンジレシピが出てくるようになる。二郎系カップ麺、チルド麺が登場してからは、さらにアレンジを加えることにより、よりリアルに「二郎」に近づけることも可能になった。
カップ麺の進化とともに二郎系カップ麺も進化していくだろう。今後、「豚ラ王 ヤサイ、アブラ、ニンニク」を超える商品が出てくるのか注目しながら、新たなアレンジ二郎カップ麺の登場にも期待したい。