好き、興味、志……「利他的自己中戦略」をとる

ポイントは、キャリアを三次元で考えること。自分自身のまわりを、ボールが取り囲んでいる様子をイメージしてみてください。これを僕は、「やわらかくて、しなやかで、やさしいボール」と表現しています。このボールは三次元の時空に浮かんでいて、他のボール(他者)と交差することもあれば、離れることもある。そんなフラットな関係です。他者との比較から逃れられ、肩書きの上下が気にならなくなります。

またこのボールは、自分の内側から湧き上がる「好き」「興味」「志」などによって広がっていきます。すると、興味が似ている他のボールと遭遇しやすくなり、つながりが生まれていく。

注意したいのは、単に自分勝手にやりたいことをやるわけではないということです。「相手のために自分にできることは何か」と考え、自発的に行動していくことで、つながりや仲間ができる。ひいては自分のやりたいことが実現できていく。これを「利他的自己中戦略」と呼んでおり、ニューノーマルに対応するうえでの人生戦略になると考えています。

澤円氏

入社して2年ほどは、「ポンコツエンジニア」だった

僕自身のBeingとは、「最大多数の最大幸福」です。これを明確に言語化できるようになったのは、この数年くらいのこと。どんなときに自分が幸せなのかと考えていくと、究極的には、周囲の人がご機嫌な状態だと気づきました。

その背景には、幼少期、僕のまわりに不機嫌な人が多かったという事実があります。学校生活では画一的な価値観や空気があって、それになじめずにいた。その影響もあり、自己肯定感はずっと低かったんです。

信じてもらえないかもしれませんが、大人になってからも自己否定の連続でした。けれども、そんな時期もあってか、「ありたい自分」について考えるようになり、「自分を正しく評価できるのは自分だけ」と心底信じられるようになった。こうして「Being」を軸に人生の選択ができるようになったのです。

自分自身の意思決定を振り返ってみて最高によかったなと思うのは、文系でIT業界に飛び込み、エンジニアの道を選んだこと。入社して2年ほどは、「ポンコツエンジニア」と自称するくらい、プログラマーには向いていませんでした。