まずは「ちょっとグレてみたら」と伝えたい

ところが、1995年に「Windows95」が登場し、インターネット時代元年を迎えた。そこではコンピューターに詳しいかどうかを問わず、誰もが初心者としてインターネットに向き合うことになりました。だからプログラミングに向いていなくても、エンジニアというだけで「素人として詳しい」というポジションを確保できたわけです。

澤円氏

その後も、つい最近まで勤めていたマイクロソフトでは、「競合他社の製品に詳しい人」という、ちょっとユニークな立場をとることで、他者と比較されないようにしてきました。これができたのは、「ありたい自分」について自己との対話を続けてきたからだと思っています。

個人力で勝負したいものの、人の目が気になって一歩が踏み出せていない方もいるでしょう。そんな方には、「ちょっとグレてみたら」と伝えたいですね。普段まずやらないことをやってみる。メイクや髪の色を変えるとか、それくらいのことでいいんです。「上司や同僚に嫌われるかもしれない」と心配するかもしれません。ですが、実際に行動を変えてみると、たいして周囲への影響はないと気づくはずです。

起きもしない未来に対して、「~かもしれない思考」で生きていると、人生をムダにしてしまう。まずは何でも試してみるのが大人のグレ方です。

自分の憧れているものに「探究心」をもつ

自分の「Being」を大事にしたいけれども、現実には周囲の期待や世間の「こうあるべき」にとらわれ、それをあたかも自分の「Being」だとしてキャリアを歩んでいる――。そんな状況にある方でも本来の「Being」に気づき、自分をアップデートしていくためにどうすればいいか。

澤円氏

1つは、自分が憧れているものに「探究心」をもつことです。憧れている人がいたら、なぜその人に憧れているのかを具体的に分解して、言語化するといいでしょう。

よくロールモデルが見つからないという人がいますよね。それは「自分と職種や世代が近い人のほうがいい」などと、勝手に候補を絞っている場合が多いから。ロールモデルは歴史上の人物でもいいし、実在した人でなくてもいいんです。

僕のロールモデルといえば、ルパン三世。けれんみがないし、自分の欲望にバカ正直に生きていて、それでいて利他的でもある。仕事観におけるロールモデルは、『007』シリーズに出てくるQや『バットマン』のアルフレッドのような、凄腕エンジニア。彼らに憧れてプログラマーになったくらいですから。彼らはたとえ目立たなくても重要な役割を果たし、主人公たちの活躍を支えていた。そういう存在への憧れがあり、自分のBeingを下支えしてくれていました。こんなふうに、自分が憧れている人の要素を思い切り受け入れ、取り入れていくことをおすすめします。