アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスCEOは、同じことを繰り返し言い続けている。たとえば「アマゾンは10年後どうなるか」と聞かれたとき、ベゾス氏は「それは自分でもわからない。ただ、昔も今も10年後も変わらないことが3つある」と答えた。その真意はなにか。Amazon Pay事業本部の井野川拓也本部長に、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が聞いた――。

※本稿は、デジタルシフトタイムズの記事「Amazonから学ぶデジタルシフトを本質的に成し遂げるための思想とは」を再編集したものです。

アマゾンジャパン合同会社 Amazon Pay事業本部 本部長 井野川 拓也/東京大学大学院 化学生命工学科修了。ペンシルバニア大学ウォートン校にてMBA取得。外資系コンサルティング会社、外資系PCメーカーを経て、2010年にアマゾンジャパン入社。2015年11月よりAmazon Payの日本統括責任者。
アマゾンジャパン合同会社Amazon Pay事業本部 本部長 井野川 拓也/東京大学大学院 化学生命工学科修了。ペンシルバニア大学ウォートン校にてMBA取得。2010年にアマゾンジャパン入社。2015年11月よりAmazon Payの日本統括責任者。

社内で頻繁に使われる「Day 1」という言葉の意味

【田中】井野川さんは2010年の1月にアマゾンジャパンに入社し「フルフィルメントby Amazon(FBA)」の立ち上げに従事し、2015年の11月からはAmazon Pay事業本部の本部長をお務めです。どのようなキャリアでいまの仕事に就かれたのですか。

【井野川】私は元々石油会社でエンジニアをしておりました。その後コンピューターの開発・販売を行うデル株式会社に勤め、その後にAmazonに入社しました。

Amazonにはもう10年ほどおりまして、販売事業者さま向けの「FBA」や広告サービス「スポンサープロダクト広告」の立ち上げを経験し、その後3番目のサービスとして「Amazon Pay」の担当をしております。

【田中】常に新しい戦略部門の立ち上げをしてきておられるということですね。

【井野川】性格的にも新しいものを作るのが好きなので。

【田中】私自身もAmazonのことを常にベンチマークしています。2017年11月には『アマゾンが描く2022年の世界』、昨年4月には『アマゾン銀行が誕生する日』という本を出しており、「ベゾスウォッチャー」と呼ばれています。

長年Amazonをベンチマークにしている私としては、井野川さんにまず、Amazonの「カスタマーセントリック(顧客第一主義)」「Day 1」など有名なカルチャーについて伺いたいです。

スタッフの質問に対し、ベゾスは「Day 2は死だ」と答えた

【井野川】よくAmazonの中では「Day 1」という言葉を使います。日本語では「初心を忘れずに」という言葉が一番近いかも知れません。最初にビジネスを始めるときの考え、そのときのスピード感を常に持ち続け、「地球上で最もお客さまを大切にする企業になること」という企業理念を忠実に持ち続けようと考えています。

以前、Amazonのスタッフがジェフ・ベゾスCEOに「Day 2はなんですか?」と質問したことがありました。それに対してベゾスは「Day 2は死だ」と答えています。初心を忘れないというカルチャーをとことん実践しようとしていると感じました。

例えばFBAは、販売事業者さまが納入した商品を、Amazonが事業者さまに代わってお客さまへ商品を配送するサービスです。事業者さまからは「そんなことしてAmazonに得はあるの?」と言われたりします。

【田中】なるほど。事業者は競合でもあるので普通は驚かれますよね。

【井野川】Amazonとして考えているのは、お客さまにとっていいことをするということ。お客さまのところへすぐ届く商品の品揃えを豊富にすることが、お客さまにとっては一番いいですよね。そう考えると、Amazonが持っている物流のノウハウは提供すべきだと考えています。

【田中】そこもカスタマーセントリックの表れということですね。