広告会社「部長決裁だった交際費は7月から本部長決裁に」
業績悪化の傾向を感じ取った経営陣が最初に取る行動は固定費の削減だ。人事部に関して命じられるのは①採用活動の抑制と②残業代の削減だ。
住宅関連会社の人事部長は次のように語る。
「すでに6月の段階で役員から中途採用の中止の指示があって今は止めている。4~6月期の業績が悪いことが明らかになってから、2022年度新卒のインターンシップの参加人数を縮小した。実際に22年度卒の採用は人事部内では半減するとの予測を立てている。状況しだいではもっと減る可能性もある」
広告会社はどうだろうか。人事部長は言う。
「残業代は幸いコロナ禍の在宅勤務が増えたことで減少しているが、各部門長には在宅であってもできるだけ定時に仕事を終了するように指示している。経費についてはコロナ禍によってもともと出張が制限されているが、顧客との商談など会食に使用する交際費はこれまで部長決裁だったが、7月から本部長決裁になった」
こうした一連の固定費の削減は本業の業績悪化を少しでも和らげようとする苦肉の策でもある。
④の「突然の役員陣の交代」は会社に何らかの重大な事態が発生している可能性もある。単なる業績悪化の引責辞任の交代なら定期株主総会で行うのが普通だが、過去の例では経営方針が大きく変わり、リストラを含む大規模な事業構造改革が実施される前に役員が交代の発生している。
業界トップ企業が引くトリガー、その後、他社は雪崩を打って始める
前述したように⑤の「減収減益」はリストラのトリガーになりやすい。⑥の「業界トップ企業の希望退職募集」については業界トップ企業の動向が下位の企業にも大きく影響するという。
前出の広告会社の人事部長はこう指摘する。
「リーマン・ショック時を含めてこれまでの不況期のリストラは、業界トップクラスの企業が希望退職募集を実施すれば、同業の企業も雪崩を打って始めたという経緯がある。その意味では今は各社が業界のトップクラスの企業の動向を水面下で探っている状況だ。トップクラスの企業がコロナ禍の業績が落ち込んだときにどういう施策を打つのかモデルになる。もし、希望退職募集実施の兆候があれば、他の企業も横並びで追随しやすい。あるいは逆にこういう時期だから雇用を守って皆でがんばっていきましょうとなるのか。その場合は個々の企業の財務体質など体力も影響してくるが」