「最終的かつ不可逆的な解決」という日韓合意を突然破棄
安倍晋三政権下での日韓関係は「戦後最悪」といわれた。元徴用工の問題がそこまで日韓関係を悪化させたのだが、前兆はあった。まず慰安婦問題では2015年12月の「最終的かつ不可逆的な解決」という日韓合意を、文政権は突然覆し、日本に何度も謝罪を求めた。
2019年夏に日本が韓国向けの半導体素材の輸出管理を厳格化するとともに優遇措置の受けられるホワイト国から韓国を除外すると、今度は「徴用工問題の対抗措置だ」としてWTO(世界貿易機関)に提訴。さらには日本が輸出管理の厳格化を撤回しなければ、北朝鮮対応の要となるGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄までちらつかせ、日本を脅した。
2年前には軍事衝突になりかねない事件も起きている。2018年12月20日に能登半島沖を飛行中の海上自衛隊のP1哨戒機が、韓国軍の駆逐艦から火器管制レーダーを照射された「ロックオン事件」である。
火器管制レーダーは航空機や艦船がミサイルなどを発射するときに放射する電波で、これを照射することによって敵機までの距離や方向が測定され、敵機を自動追尾できる。ロックオンは照準を合わせた状態を示し、武器使用に準じる軍事行動なのである。韓国の行為は異常だった。当時、日本側が強く抗議したのは当然だ。
日韓関係がギクシャクすると困るのはアメリカだ
韓国にとって日本は単なる隣国ではない。アメリカを介して安全保障を構築できる信頼に足る国家でなければならない。国際社会に逆らって核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を制するには、日米韓の協力が欠かせない。
アメリカは日本や韓国からの軍事情報を頼りにしている。日韓関係がギクシャクすると、アメリカが困る。戦後最悪という日韓関係を改善するためにアメリカはどう動くだろうか。沙鴎一歩はすべてはアメリカの今後の動きに掛かっているとにらんでいる。
文政権はアメリカと北朝鮮の間に入って史上初の米朝首脳会談を実現するなど北朝鮮に誠意を見せてきた。しかし、北朝鮮は文政権を相手にしていないように見える。そのことを韓国の文在寅大統領はどう感じているのだろうか。