50歳未満の国民をローリスクとしたイギリス

2番目のケースはイギリスです。イギリスはイタリアを上回る最悪な状況で、4~6月のGDPは年率でマイナス59.8%とヨーロッパ諸国の中でも突出しています。

イギリスのGDPがなぜこんなに悪くなったのか。それは他の欧米諸国よりもロックダウンを徹底して広範かつ長期にわたって経済を閉ざしたからです。実際、人気の観光スポットである大英博物館も再オープンしたのはつい先日の8月27日でした。コロナが拡大してから実に163日間も閉鎖が続いていたことになります。

ただイギリスはロックダウンにあたり給与の8割を最大3カ月助成するというように、補償には力を入れていました。さすがはポピュリズムで誕生したボリス・ジョンソン政権と言えるでしょう。一方、日本は新型コロナだけでなく消費税の増税で構造的に経済が傷んでいるわけです。

イギリス経済が大きく傾いている理由はもう1つ、ブレグジットの悪影響もありそうです。EUから離脱した直後にコロナが直撃し、英ドーバーと仏カレー間の物流に関税が発生するようになりました。

トラックなどの貨物が長蛇の待ち行列となり、結果的に物流の量は3カ月間で45%減少してしまいました。イギリスを含めEU諸国はお互いに分業しています。医薬品はドーバー海峡を渡って大陸からくるものが多いので、病院関係者は「なんでこのタイミングでブレグジットしたかなあ」とため息をついている様子です。

イギリスでは経済を元に戻すために、この先は国民を50歳未満のローリスクグループと、50歳以上のハイリスクグループに分けて、ローリスクグループの外出振興策を練っているといわれています。要するにリスクがほとんどない50歳未満のグループには普段通りの生活を送ってもらって経済を再開させ、50歳以上のリスクグループは外出禁止令で閉じ込めようということです。

経済活動を再開させる一方で、コロナ対策としてはハイリスクグループ限定の外出禁止令とクラスターが発生しやすい特定業種の営業停止、感染が広がり始めている地域の封鎖を組み合わせる予定です。ちなみにイギリスは経済が悪いだけでなく、100万人あたり死者数も610人とイタリアを上回っています。

消費税減税に踏み切ったドイツ

さて、イタリアとイギリスを反面教師だと考えた場合、優秀な教師に見えるのがドイツのアンゲラ・メルケル首相でしょう。結果として100万人あたりの死者数は111人で、欧米では死者数を比較的抑えられています。

ドイツの特徴はとにかく経済支援が早かったことです。自営業の方々に即時支援として5000ユーロ(約62万5000円)が支給されたのですが、その申請から振り込みまでわずか2日だったといいます。

もともとドイツは財政の健全化路線に力を入れていて、政府の方針としてはお金を出し渋る傾向にあるのですが、今回のコロナでは「非常事態には特別な対応が必要だ」と宣言して大胆な政策をとりました。このあたり、メルケル首相の政治家としての手腕を感じさせます。

実際ドイツではコロナをきっかけに消費税の減税に踏み切りました。コロナ対策として企業には労働者の首切りではなく労働時間を減らすことを推奨し、政府がその減った時間分の収入を補填するという形で、企業にも国民にも双方に即効性がある政策が打ち出されています。

この制度はリーマンショックのときに一度機能しています。今回も過去に成功した政策だったことで対応が迅速だったようです。日本はリーマンショックのときに当時の麻生首相が国民全員に1万2000円の助成金を配布した失敗体験から、今回の助成金政策が二転三転し時間がかかったのとは真逆な状況でした。