このように、特に都市部の人々の食生活が急激に変わってきた背景には、海外旅行で得た経験や、中国国内に持ち込まれた多様な料理の影響など、経済的な躍進からくる面が大きい。2014年ごろから、中国人の海外旅行は爆発的に増え、中国人は海外で、それまで食べたことのなかったさまざまな料理を食べる機会が増えた。その中で自分の口に合う料理を覚え、国内でそれが食べられるレストランに行ったり、自分でも作ってみたりするうちに、「中華料理以外の料理のおいしさ」にも目覚めるようになった。
洋食店が増え、注文する量も限られてきた
日本、特に東京は世界中のおいしい料理が食べられるグルメな都市だ、というのはよく聞く話だが、ここ数年は上海などでも珍しいジャンルの料理店をよく見かけるようになった。同じく昨夏、20代の若者に「おいしいお店に連れていって」と頼んだところ、こじんまりとした、おしゃれなギリシャ料理店に案内してくれた。
何を注文したのかはもう覚えていないが、その若者は以前、ギリシャを一人旅したことがあり、そのときにおいしかったという、ギリシャの代表的な料理を3品ほど注文してくれた。2人での食事なので、3品あれば十分だった。
私は中国で、さまざまな中国人と一緒に食事をする機会があるが、改めて思い返してみると、ここ数年は、中華料理以外のジャンルの店に行く機会が圧倒的に増えたということに気づいた。私が日本から出かけているので、相手が気を遣って「上海料理と四川料理のどちらがいいか?」と聞いてくれることはあるが、私が何もいわなければ「イタリアンのおいしい店を見つけたが、そこはどうだろう?」などと聞いてくる。2人で洋食ならば自然と注文する量は限られる。
中華料理ならば、洋食のようなコースメニューになっていないし、単品でも量は多めになりがちだが、それでも習主席が指摘しているような、「食べきれないほどの料理」を注文したり、されたりした記憶はない。3人ならば人数分より1品多い4品が妥当なところだが、場合によっては5品くらい注文する。
20人の宴会で40人前の料理が出ることも
だが、大人数での会食や宴会となると、少し状況が変わってくる。家族の誕生日や春節などのとき、中国では親戚も含めて10人以上で食事をすることが多いが、円卓を囲む料理なら、10人で11品ということはない。レストランによってコースメニューは変わるが、10人で15品か、あるいはもっと注文することもザラにある。品数が多すぎて、円卓に皿がのりきらず、半分食べた料理の皿の上に、別の皿を重ねてのせることもあるほどだ。