ただし、さまざまな消費者の声を聞いてみると、商品によってさっぱり感や濃厚さなどで、アイスや氷菓を使い分けているのも感じられる。違う味を楽しみながら、定番を押さえているようだ。

アイスクリームで「失敗したくないので」

近年のアイス喫食で目立つのが「ながら食べ」。特に「スマホをいじりながら」が多い。そうなると、片手で食べられ、手が汚れないバータイプ、はさんだタイプ、チューブタイプなどが好まれる。

実は今回の企画段階では、さまざまなフレーバーでの競争もイメージしていた。

だが取材をしてみると、思ったほど奇をてらった新商品はなかった。19年、各メーカーを取材した際も「消費者が保守的になり、失敗したくない気持ちが強い」という話も聞いた。

コロナ禍の中、ずっと考えていた言葉がある。「昔の日本に戻った」という言葉だ。

例えば「都市部の路上で、親子でキャッチボールをする」光景は、コロナ自粛中、本当に久しぶりに目にした。震災や新型コロナウイルスのような、自分ではどうしようもない困難に直面すると、さらに保守的になり、身近な遊びや楽しみに手を伸ばすのではないか。

コロナの影響で、収入が減少した人もいるだろう。その意味ではアイスクリームは財布にやさしく、生ケーキと比べても安い。

先が見えない閉塞感を「手軽な気分転換」で晴らす時代性──。消費者は「今の自分にピンとくるアイス」を手に取るはずだ。

商品シリーズTOP5(売り上げベース)単品アイスTOP5(シェアベース)
百花繚乱!?  一番人気はどのアイス?
単品のランキングで首位の座を不動のものとしているのが「チョコモナカジャンボ」だ。商品シリーズ別(フレーバーを分けない)で首位に輝くのが「明治 エッセルスーパーカップ」だ。発売以来、軸足をブラさずに「安い・デカイ・ウマイ」を訴求し続けているのが人気の秘訣。トップシリーズの地位は盤石だ。もう1つ、“別枠1位”がある。それが「ハーゲンダッツ」だ。高級アイスの代名詞として知られ、ブランド全体の売上高は500億円を超える。群雄割拠のアイスクリーム業界では、これら“3つの王座”をめぐって、各社がしのぎを削っている。
(撮影=石橋素幸、熊谷武二、永井 浩、本田 匡)
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