※本稿は、髙橋貴洋『「うまい!」の科学』(イースト新書)の一部を再編集したものです。

手にビールを持ち、乾杯するふたりの手元
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アルコールは苦味や痛覚刺激(灼熱感)が圧倒的に強い

コミュニケーションの場に欠かせない、お酒。一人で飲む人もいる、嗜好性しこうせいの高い食品です。実は、アルコール(エタノール)そのものには、若干の甘味はあるものの、苦味や痛覚刺激(灼熱感しゃくねつかん)などが圧倒的に強いのです。多くの人にとって、嫌悪刺激に感じられるでしょう。

つまり本能的にほとんどの酒類はおいしいはずがなく、ビールや焼酎、日本酒よりも低アルコール飲料やリキュール、甘いカクテルをおいしく感じるのが本来なのです。「若者の酒離れ」などと耳にしますが、食経験を積んでいなければ「本能的に飲めない」のは、今も昔も同じです。

では、お酒初心者はどのようにしてお酒を飲めるようになるのでしょうか?

毎日少しでも摂取することで慣れていき、飲めるようになるのです。食行動心理学でいう「単純接触効果」というものです。もちろん、毎日飲めば慣れるからといって、無理は禁物です。お酒初心者は、「飲む機会があれば無理をせずに挑戦してみる」のが望ましいでしょう。毎日摂取……でお喜びの諸先輩方は、初心者が同じように酒を飲み交わせるようになるまで、節度ある飲酒をお続けください(笑)。

なお、「嫌いなもの(ビール)」と「好きなもの(甘いものなど)」を交互に食べるとより効率的です。コーヒーも同じで、ミルクや砂糖を入れてラテにして飲むよりも、ブラックコーヒーとケーキを交互に食べたほうが、コーヒーを飲めるようになるためには効果的なのです。この単純接触効果を狙った方法は、最低でも10回以上はトライすることで効果を上げます。