「冬の女王」が夏に勝負

20年6月23日、ハーゲンダッツ(本社・東京都目黒区)から期間限定で「アーモンド&ミルク」「ゴールデンパイン&マスカルポーネ」のジェラート(カップアイス)が発売された。

ハーゲンダッツ ジャパン ブランド戦略本部 渡辺淳巳氏
ハーゲンダッツ ジャパン ブランド戦略本部 渡辺淳巳氏

「お客様がハーゲンダッツに期待される味を、新シリーズのクリーミージェラートで実現しました。アーモンド味は、香ばしくすっきりした後味のアーモンド+豊かな風味とコクのミルク、パイン味は、ジューシーな甘酸っぱさ+甘く濃厚な味わいのマスカルポーネの調和が、それぞれ楽しめます」

ハーゲンダッツ ジャパン・ブランド戦略本部の渡辺淳巳さんは、こう語る。「(食べ方は好みだが、)最初はそのまま、少し溶けたら練って食べるといった違う味わい方も楽しめる」何度食べても飽きがこなそうな商品だ。

生活文化や消費者心理も考察する筆者は、ブランドの中には“TUBE型(夏型)”と“広瀬香美型(冬型)”があると思う。ハーゲンダッツは後者の代名詞といえる。

事実、「1984年の日本上陸以来、年間を通じて12月の売り上げが最も高いブランドです」という。30年以上前から「冬アイス」だった。

つまり今回は、「冬の女王が夏に勝負」というわけで、新商品も「夏に食べたくなるハーゲンダッツ」を掲げている。

ブランドとして「氷菓は出さない」

昔から、アイスクリーム業界では「最高気温が25℃を超えるとアイスクリームが売れて、30℃を超えると氷菓が売れる」と言われる。前述した冬のアイス需要もあるので、一概には言えなくなったが、やはり夏は氷菓が強い。これは「暑さしのぎ」の意味合いもあるからだ。

夏向けの新商品開発では、氷菓への誘惑はなかったのか。

「10年以上前には氷菓系を出しましたが、現在は考えていません。消費者調査をすると、当社の商品に期待するのは『ミルクの味わい』や『濃厚さ』。その軸足を踏まえた商品開発を行います」

夏のフレーバーとして、果実系ではマンゴーや柑橘系が人気だが、今回はパインを選んだ。

「ゴールデンパインの酸味の強さが、暑い夏はすっきりしたい消費者心理に合うのに加えて、濃厚さも実現できたからです」

ジェラート系と並ぶ、同社の夏のオススメが「ラムレーズン」(20年8月4日発売)だ。

「84年の日本上陸時に初めて発売した5つのフレーバーの1つで、今回初めて改良を行い、通年販売商品に加えました。これまでより風味の強いラム酒を使った一方で、製品に占めるアルコール濃度を下げ、夏場にも楽しめる味となっています」

これまでハーゲンダッツには、基幹商品と呼ばれる通年販売のミニカップが7つあり、今回のラムレーズンで“神8エイト”となった。人気順は、バニラ・ストロベリー・グリーンティーで、長年ベスト3の顔ぶれは変わらない。新メンバーがこの牙城を崩せるかも注目される。