大阪府は全国で1番店が多い「喫茶王国」
ところで「喫茶王国」といえば、モーニングサービスで知られる愛知県を思い描く人が多いかもしれない。
だが喫茶店数では、国内都道府県で最も多いのは大阪府だ。1位・大阪府、2位・愛知県、3位・東京都の順位は長年変わらない。
ただし支出額は少ない。こちらは都道府県庁所在地・政令指定都市での比較だ。
数年に一度発表されるデータ(総務省統計局「経済センサス」を基にした全日本コーヒー協会発表)では、最新では1位・岐阜市、2位・名古屋市、3位・東京都区内の順だ。
岐阜市と名古屋市の1位と2位は入れ替わることが多く、この2市が支出額で突出している。東京はいつも3位。大阪市は筆者が知る限り、ベスト3に入ることはなく、神戸市などよりも順位は低い。商人の町だが、喫茶代に関しては“シブチン”(=財布のひもが固い)といえよう。老舗喫茶店も多い土地柄だが、大阪の老舗店はこうした気質とも向き合い、生き抜いてきた。
茶会好きだった豊臣秀吉のお膝元でもある
大阪城のスタバでコーヒーを飲みながら、考えたことがある。
「豊臣秀吉が甦ったら、自分の庭で出された『南蛮由来の茶色い湯』をどう思っただろうか」
味は苦くて、薬のように感じたかもしれないが、異国の味に興味を持って「大茶湯」を催したのではないか。1587(天正15)年には秀吉が、京都の北野天満宮で「北野大茶湯」という大規模な茶会を催したという。今なら巨大なカフェイベントだ。
妄想にすぎないが、そうした文化が残れば、「ここぞという時は、喫茶代にお金を使う大阪人」として、前述の調査で、大阪市が首位に君臨したかもしれない。日本の喫茶文化を考察すると、何かのきっかけで一気に盛り上がる現象もあったからだ。