日本ではあらゆる場所で「男性優位」がまかり通っている。それは歪みを厳しく指摘するべきメディアも同じだ。朝日新聞の南彰記者は「記者と取材先が『賭け麻雀』のような秘密を共有し、男性同士でお互いを認め合っている。この『ボーイズクラブ』が日本メディアのムラ社会の正体だ」と指摘する——。

※本稿は、南彰『政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

3人の同僚が財務計画について話している
写真=iStock.com/shironosov
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「ハッシュタグ」デモを生んだ女性

〈1人でTwitterデモ #検察庁法改正案に抗議します
右も左も関係ありません。犯罪が正しく裁かれない国で生きていきたくありません。この法律が通ったら「正義は勝つ」なんてセリフは過去のものになり、刑事ドラマも法廷ドラマも成立しません。絶対に通さないでください〉

2020年5月8日夜。広告制作の仕事をしている30代の女性会社員・笛美さんが、検察幹部の定年を特例で延長できるようにする検察庁法改正案に抗議するツイートをした。

「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグは芸能人・著名人にも広まり、9日には500万件を超すうねりに。国会での数の力を背景に、成立に意欲を示していた安倍首相も同月18日夜、「国民の理解なくして前に進むことはできない」と通常国会での成立を断念。秋の臨時国会以降に先送りすることを表明した。

笛美さんのもとにはうねりが広がるなかで、「ハッシュタグのおかげで、今まで言えなかったことが言えた」などと感謝のメッセージが次々寄せられた。もともとは仕事一筋で政治に無関心な人生を送ってきたが、2年ほど前から日本で女性として生きるしんどさを感じてフェミニズムに興味を持つようになり、ツイッターでの発信を始めたという。激動の10日間を振り返り、自身のnoteにこう綴った。

「誰だって声を上げていいし、周りの人が連帯してくれる」

〈私はこれまで通りフェミニストとして、ジェンダーギャップ121位の日本でフェミニズムを当たり前にするために声を上げていきたいです。また1人の声を上げる人として、「1匹のウサギ」として、声を上げようとする人を応援する活動もしていきたいです。SNSのおかげで、誰だって声を上げていいし、声を上げれば周りの人が連帯してくれる時代になりました。次はあなたが声を上げる人になってください〉
2020年5月19日「#検察庁法改正案に抗議します 激動の10日間と今後について」