検察庁法改正案をめぐるもう一人の主役は、黒川弘務・東京高検検事長だ。安倍政権は同年1月、国家公務員法の規定を適用するという強引な勤務延長手続きによって、「安倍官邸の守護神」ともいわれた黒川氏の検事総長就任に道を開いた。検察庁法改正案は、違法性が指摘されるこの手続きを後付けで正当化するものと見られていた。

その黒川氏をめぐって、5月20日、週刊文春オンラインが記事を配信した。

疑惑の人物を記者が囲って接待麻雀

〈黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密?”「接待賭けマージャン」〉

法案審議のさなかの5月1日、黒川氏が都内のマンションで6時間以上、麻雀に興じていたという内容の報道だ。相手は産経新聞社会部記者2人と朝日新聞の元検察担当記者で、日付かわって午前2時ごろにマンションから出てきたメンバーはいずれも男性だった。

黒川氏とこの男性記者たちとの麻雀は5月13日夜も行われた。週刊文春では、「いつも黒川氏と連絡を取り合って日程調整をする記者も、さすがに時期的にマズイと思ったそうです。でも、黒川氏からやりたいと言われれば、当然断れない。『黒川さんがすごくやりたがっているから、仕方ないんだ』とボヤいていました」という産経関係者の発言が紹介されていた。

体育会系などで顕著に見られる男性同士の緊密な絆でお互いを認め合っている集団を「ボーイズクラブ」という。

秘密を共有し合う男性たちの麻雀はその典型だった。

主要7カ国で最も男女格差がある日本

世界経済フォーラムが2019年12月に発表した同年の「男女格差(ジェンダーギャップ)報告書」で、日本の順位は153カ国中121位で過去最低だった。安倍政権が「女性活躍」を掲げてきたが、同年1月時点の衆院議員で女性が10.1%、閣僚は19人中1人(5.3%)しかいないことが響き、男女格差の指数が前年の66.2%から65.2%に後退。主要7カ国(G7)では最下位になった。

記者会見で結果を問われた自民党の二階俊博幹事長は「いまさら別に驚いているわけでも何でもない」としたうえで、「徐々に理想的な形に直すというか、取り組むことが大事だ」と述べるにとどめた。男女の候補者を均等にするよう政党に求める候補者男女均等法(パリテ法)ができたが、施行後初めての国政選挙となった19年7月の参院選で、自民党の女性候補割合は15%だった。

財務事務次官のセクシュアルハラスメント問題が起きた直後、麻生太郎副総理が「男の番(記者)に替えればいいだけじゃないか」「次官の番(記者)をみんな男にすれば解決する話なんだよ」と周囲に語ったと報じられ、批判を浴びた。