わかりにくい文というのは、読者から時間を奪っているのと同じです。「はい、エスプレッソ」と出されても、読者は苦くて飲みにくいから、いちいちミルクを入れたりして薄めないといけない。

わかりやすい文を書くことは、読み手に時間のプレゼントをするのと同じくらい価値があるのです。

「過不足」のない文章を心がける

伝わる文章は、過不足のない文章とも言いかえられます。

そのためにも「なるべくシンプルに言えないか?」を考えることです。いきなり高度なことをしようとせず、基本を押さえることがなにより大切なのです。

料理がうまい人ほど、まずレシピどおりにつくります。新しい料理をつくろうと思ったときに、料理上手な人ほどレシピを見ながら、きちっと分量を計ってつくる。だから、おいしくできるのです。

料理が下手な人ほど、なぜかレシピを見ずにいきなり「アレンジ」してしまいます。ベーシックなカレーすらできていないのに、「カレーにコーヒーの粉を入れるとうまいって聞いたから入れてみよう」みたいなことばかりやるのです。

同じことが文章でも言えます。「美しい文章を書きたい」「頭がよさそうな文章が書きたい」という思いが先行してしまって、そもそも伝わってすらいないのに、いきなりアレンジをしてしまうわけです。

アレンジをしていいのは、基本がきちっとできているシェフだけです。基本的な肉じゃがをつくれるから、「じゃあ、カレー肉じゃがをつくろう」とアレンジしたり、「ちょっとはちみつを足してみよう」といった小技が使えるのです。

ぼくらはプロの作家ではありません。まずはシンプルを目指しましょう。

削ることができるものは、なるべく削る

余計なものはどんどん削っていきましょう。余計な脂肪をとりのぞいて、なるべくシンプルにしていくと、過不足のない「筋肉質」な文章ができあがります。

どう削ればいいのか、ひとつずつ見ていきましょう。

<① 「説明しなくてもいいもの」を削る>

説明しなくてもいいものは、削ります。

朝起きると、空がとても晴れていて、本当に気持ちよかったので、私はうちで飼っている犬と一緒に家の近くの公園を散歩して歩いた。

この文は、

朝、晴れていて気持ちよかった。愛犬と近所の公園を散歩した。

ここまで削ることができます。

まず、朝はだいたい起きるものだから、「朝起きると」ではなく「朝」だけで十分伝わります。「空が晴れていて」も、晴れるのは空に決まっているので「空が」を削ります。「これ、必要かな?」と迷ったら、まず削ってみることです。そこで意味がわかればそのままにしておきましょう。