差引損失額が950万円のAさんのケースで試算すると…

【計算例】Aさんは、令和2年の豪雨で自宅(木造・2階建・築20年)が一部損壊、床上50cmの浸水にあった。

差引損失額が950万円、災害関連支出100万円、総所得金額が500万円、雑損控除をする前の所得控除の合計金額200万円、所得税20万円だった場合。

(1)950万円(差引損失額)-500万円(総所得金額)×10%=900万円
(2)100万円(災害関連支出)-5万円=95万円

900万円>95万円なので、雑損控除の金額は900万円となる。

所得控除の合計額に雑損控除を加算すると、

200万円(雑損控除以外の所得控除の合計金額)+900万円(雑損控除額)=1100万円(雑損控除を加算した所得控除の合計金額)
500万円(総所得金額)-1100万円(雑損控除を加算した所得控除の合計金額)=-600万円(課税される所得金額)

課税される所得金額が-600万円なので、令和2年分の所得税は0円ということになる。

3年間、所得税と住民税が0円になる

令和2年分で引ききれなかった雑損控除の金額600万円は、翌年の令和3年分と翌々年の令和4年分の所得控除としても計算することができる。

令和3年分も総所得金額が500万円、雑損控除をする前の所得控除の合計金額200万円、所得税20万円であると仮定すると、

令和3年分の所得控除の金額は、

200万円(雑損控除以外の所得控除の合計金額)+600万円(雑損控除額)=800万円(雑損控除を加算した所得控除の合計金額)
500万円(総所得金額)-800万円(雑損控除を加算した所得控除の合計金額)
=-300万円(課税される所得金額)

課税される所得金額が-300万円になるので、令和3年分も所得税は0円となる。

令和4年分も総所得金額が500万円、雑損控除をする前の所得控除の合計金額200万円、所得税20万円であると仮定すると、

所得控除の金額は

200万円(雑損控除以外の所得控除の合計金額)+300万円(雑損控除額)=500万円(雑損控除を加算した所得控除の合計金額)
500万円(総所得金額)-500万円(雑損控除を加算した所得控除の合計金額)=0円

課税される所得金額は0円なので、令和4年分も所得税は0円となる。

雑損控除の申告をすると、本来、3年で合計60万円納めるべきだった所得税が0円になり、それに伴って住民税も0円となる。

Aさんの場合、差引損失額が950万円だと、所得税は3年間免除されることがわかった。