「災害減免法」という救済措置もある
なお、被災者への救済措置としては災害減免法という制度もある。災害によって住宅や家財に損害を受け、その損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除く)が時価の2分の1以上の場合に使える。
軽減割合は所得によって変わる。所得500万円以下で所得税全額免除、500万円超750万円以下で2分の1、750万円超1000万円以下で所得税の4分の1が軽減される。なお、所得1000万円超の人は適用されない。
雑損控除は所得控除(所得金額から控除すること)なのに対し、災害減免法は税額控除(所得金額に税率を掛けて計算した税額から直接控除すること)だ。
雑損控除と災害減免法で、どちらの方が得をするかはケースバイケースだ。災害減免法は、その年の所得税だけを軽減・免除するものなので、損害額が所得金額を超えて1年で控除できない場合は、損害の繰り越しができる雑損控除を選択する方が有利かもしれない。
どちらが有利になるかは、実際に確定申告書を作成し、比較検討することが必要だろう。
り災証明書や災害時の現状復帰の領収書は取っておく
雑損控除や災害減免法を受けるためには、通常2月16日~3月15日(還付申告の場合は1月1日から)の間に確定申告を行う必要がある。
国税庁のHPでは、相談については電話予約の上、税務署に来るようにと書かれている。確定申告の時期になると個別相談は受け付けてくれない可能性が高くなるので、年内に相談に行くのがよいだろう。
その際、市区町村が発行したり災証明書や災害時の現状復帰の領収書も持っていくとよいだろう。
税務署では、“総合勘案して”という言葉がよく使われる。被害に遭っているという前提なので、担当者も親身に話を聞いてくれると思う。
最後にもうひとつ確認しておきたいのは、雑損控除は本人でなくても、生計を一にする親族が被害に遭われていれば適用をすることができるという点だ。
“生計を一にする”については、国税庁のHPに説明がある。
日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、1生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、2日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
【国税庁HPより引用】
例えば、年老いた両親と離れて暮らしているが、毎月生活費を仕送りし、両親はそれによって生計を立てているというような場合は、自身が被害に遭った場合でなくても確定申告で雑損控除の適用を受けることができる。
少し落ち着いてからでよいと思うので、お見舞いを兼ねて被害の状況について確認するとよいだろう。
今回は、水害に遭っても雑損控除を受けることで納めるべき税金が0円になる場合があるということを紹介した。
保険でお金が戻ってくることに比べると、所得税の軽減は微々たるものかもしれない。しかし、被災した状況について説明することで少しでも税負担が軽減されるのであれば、税務署に足を運び、相談をしてほしい。