固定票タイプが2割弱いれば無敵に

このような各人の意見の調整、変更が繰り返し断続的に起きて、集団全体の賛否の比率が安定になるまで続くと考えるのである。ガラム博士はこの過程を確率分布の時間発展を記述する方程式で表した。そしてそこからいくつかの興味深い結論を得た。

(1)それによるとまず、固定票タイプがいない浮動票タイプだけの社会では、意見の調整が進むにつれて、賛否いずれかが優位になって最後は全員賛成、もしくは全員反対になる。このときどちらに傾くかは、最初の意見の分布で、賛成派が5割を超えているかどうかで決まる。つまり浮動票タイプが意見の人真似をしていく過程で、賛否の差が拡大して、最初の多数派が勝つことになる。

(2)固定票タイプが少し混じっただけで、賛否の分布に与える影響は大きい。例えば「常に賛成」の固定票タイプが5%いるとき、たとえ最初に70%が反対であっても、ランダムなグループに分かれての意見の調整を経ると、最終的には全員が賛成派となってしまう。

(3)固定型の人が17%以上混ざっていると、彼らは無敵である。つまり17%だけ絶対賛成派の固定票タイプがいたとすれば、残りの浮動票タイプの人全員が反対から始めても、時とともに全員が賛成派になってしまう。

ちなみにここでマジックナンバーのように出てくる17%、すなわち数0.17であるが、これは正確には3-2√2=0.1715……である。この数自体はランダムに3人で意見を調整する、という特定の仮定に依存して出てきたものである。例えば3人を5人に変える等の変更を加えると、17という数自体は少々変わってくる。しかし本質的な結論は不変である。まわりと意見交換をしながら社会全体の意見を調整する「民主的手続きを踏んだ」多数決を行う場合、2割にも満たない確信をもった少数派の意見が、残りの一般有権者全体の意見に優先することが起こるのである。