ハイチにそれができないのは借金したくても貸し手がいないからだ。借金は貸し手がいなければ成立しない。今現在貸してくれる人がいる日本のような国でさえも、返済能力に疑義が生じれば、貸し手は蒸発する。投資資金が返ってこなくなるのだから当然だ。借金総額が多くなれば返済不能リスクは当然大きくなる。「相手が国であろう」と変わりはない。

すでに国は「自転車操業」を続けている

国の借金である国債にも当然満期がある。10年国債であれば、10年後に借金を返さねばならない。今の日本政府は単年度赤字だからその返済原資がない。したがって国債の満期が来れば返済原資を新たに借りねばならない。自転車操業だ。

令和2年第2次補正後の国債発行額(財投債と復興債を含む)は253兆円というとんでもない額だ。コロナ対策費が急増して今年の赤字を賄うために90兆1000億円もの新規国債を発行する。その他に今年度中に満期がくる108兆円という返済原資を借換債発行で調達しなければならない。

誰かがこの253兆円分の国債を買ってくれなければ、今年度に満期がくる借金が返済できずに財政破綻となる。自転車操業の資金繰りは民間であれ、国であれ、恐怖である。

今の日本の財政を家計に例えれば、年収700万円の収入の家庭が今年は1600万円を支出する。今年末に借金額は年1億2000万円に達する。満期がくる借金の返済分を含めて、今年、2530万円の調達が必要だが、このような家計に融資をしてくれる銀行なぞ、まず無い。自己破綻だ。

しかし国相手なら、銀行は(今のところ)貸し続けて(=国債を新たに購入)くれている。国には家計には無い徴税権があるからだ。いざと言えば、大増税をして、それで借金を返してくれると思っているからだ。だから、253兆円はなんとか消化できている。

MMTは「禁じ手中の禁じ手」そのもの

と言いたいところだが、最近の邦銀は保有国債残高を急速に減らしている。(=融資を引き揚げている)国への融資を回収し始めているということだ。

少なくとも、返済見込み0%では国に融資をする気はない。借金額が過大になってくれば、徴税で借金を返してくれるか、だんだん心配になってくるから当然だ。たしかに銀行は入札で国債を購入してはいるが、それは、すぐに日銀に転売し、さやを稼ぐためである。日銀トレードと言う。

そこで、借金総額が膨大になった国が253兆円もの国債を消化するためには、ある意味、国と運命共同体である中央銀行の存在が不可欠になる。満期国債の償還原資と新たな借金を確保し、財政破綻を回避するためだ。