「当面の平穏」で蔓延する財政楽観論
2010年代初期には多少なりともあった財政への危機感が、昨今は無くなってしまったのは、2013年からの異次元緩和で危機が先送りになり、長期金利が低位安定したがゆえに「当面の平穏」が保たれたことが大きい。
さらには、「当面の平穏」時に事態が少しも改善されず、ますます悪化していったのは、「財政は大丈夫だ」との「楽観論」が世で幅を利かせたせいだと思う。そのせいでマスコミ、政治家が財政再建に努力を全くしてこなかった。この罪は大きい。
太平洋戦争末期、「日本は神国だ。負けるはずはない」の楽観論で終戦が遅れ、多くの犠牲者を出したのと同じだ。楽観論がきちんと世間で、否定されていれば、こんな「インパール作戦」(※)のようなことは起きなかったと思う。
※筆者註:インパール作戦とは、第2次世界大戦のビルマ戦線に於いて、敗戦が明確なのにもかかわらず作戦の危険性を指摘する声をかき消し、最後の最後まで作戦を実行してしまった歴史的敗北の作戦で、極めて多くの犠牲を出した。「無謀な作戦」の代名詞。
私は、この機に至っては、ハイパーインフレが起こり、その鎮静策として「日銀をつぶし新たな新中央銀行を設立する」しか解決策はないと思っている。日銀破綻は今の円紙幣が紙くずになることを意味し、国民には地獄である。
危機を助長した奇妙奇天烈なMMT(現代貨幣理論)
この見解に対し、よく「フジマキは過激だ」と非難されるが、「日銀がやっていることが余りに過激」なので当然の帰着として「過激な結論」となるのだ。それが30年近くマーケットの最前線で戦ってきた実務家フジマキの見解だ。
その過激な事態が起きても、財政楽観論者や政府・日銀はコロナ禍のせいにして責任逃れをするだろう。それでは、将来何十年かして、又、同じ間違いを起こしてしまう。これから起こるであろう過激な事態は「財政赤字が極大化し、その危機を異次元緩和で先に飛ばした結果」起こるのだ。
危機の先送りの結果、日銀がメタボ(=バランスシートの拡大。縮小して健康体に戻る手段を喪失)になり、財務内容が極めて劣化したことで起きる事実をきちんと分析、記録しておかねばならない。
コロナはきっかけにすぎない。MMT(Modern Monetary Theory・現代貨幣理論)をはじめとする奇妙奇天烈な楽観論が、この危機を助長したのである。
MMTは「トンデモ理論」だ
将来、同じ間違いを二度と起こさせないために、楽観論がいかに「トンデモ理論」かを今、ここで論じておこう。楽観論の最たるものの一つが、MMTというおこがましい名前をつけた「ブードゥー経済学」(※)だ。
※筆者註:ブードゥー教はいけにえの儀式など、呪術的な性格からあやしげなものの代名詞。