日本政府は年70兆円の収入しかないのに、160兆円の予算を組んだ。差額の90兆円は借金だ。このままで大丈夫なのだろうか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史氏は「国債を発行して、政府に積極的な財政出動を求めるMMT(現代貨幣理論)が幅を利かせているが、トンデモ理論だ。円暴落・ハイパーインフレというシナリオがあり得る」という——。
壊れた貯金箱
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コロナ禍でお湯の熱さに気づいた「ゆでガエル」

この1カ月強の間に、日本経済新聞電子版、週刊朝日、週刊現代などが「預金封鎖・新券発行」のリスクを取り上げた。コロナ対策の結果、2020年度の「税収+税外収入」が70兆円(予算段階)なのに160兆円もの歳出で、90兆円もの借金が生じるのだから、心配する人が出てきても当然だろう。

しかしコロナ禍で「預金封鎖・新券発行」のリスクが生じたわけではない。コロナ騒動で借金の深刻さに、皆が気づいただけだ。30年間、毎年巨額の借金を積み増し、国の累積債務残高はすでに1114兆円に達した。しかし、幸い何も起きなかった。私たちの生活には影響は出ていない。

そのせいか、皆が「ゆでガエル」状態になっていたのに、コロナ禍で、湯の熱さに気がついたのだ。

7月22日の日経新聞によると「20年の一般政府の債務残高はGDP比で268%まで上昇する見込み」だそうだ。ハイパーインフレで「預金封鎖&新券発行」を行わざるを得なかった第2次世界大戦直後の数値よりひどい。

日経新聞のいうように「米国の141%、ユーロ圏の105%と比べ突出して厳しい」のだ。GDPと税収はほぼ比例して増える。したがって「対GDP比の財政赤字が世界最悪」とは、日本は「税金で借金を返す」のが世界で一番難しい、「終戦直後より難しい」ということになる。巷で預金封鎖の懸念が出てきても不思議はない。