危機的状況において「反日」はとるべき態度か

今回の危機は、企業の大きさや業種を問わずに影響を与えています。特に航空業界でも投資家サイドでも変化が見られます。5月2日、ウォーレン・バフェットは、自身の率いる投資・保険会社バークシャー・ハサウェイで保有していたデルタ航空とサウスウエスト航空、アメリカン航空グループ、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスの株式を全て手放したことを明らかにしました。バフェット氏は、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的影響で航空事業が根本的に変容したと指摘しているのです。今回の危機における航空業界のダメージの大きさを物語っていると感じます。

また、リーマンショックの時を振り返ってみましょう。大企業ですら存在が厳しい状況に追い込まれました。米国では自動車業界の需要がなくなり、GMやクライスラーが倒産、日本では需要の激減によってJALが倒産しています。今回のコロナ危機では、ANAが月間の現金流通額が1000億円にとどまるとみられ、今年の4月には日本政策投資銀行(DBJ)の危機対応融資を活用して、約3500億円調達の検討に入っています。

今後、感染の拡大状況に鑑みてということではあるものの、この先、少しずつ移動の制限は段階的に解かれていくでしょう。まずは隣国への渡航といった消費行動が予想されます。「韓国―日本」間の移動は経済的な面から見ても「重要な需要」なのです。この環境の下で、「反日」「反日不買運動」などを掲げている場合ではありません。

フェアな目線で危機を乗り越えるための行動を

国内経済が冷え込むと支持率は低下します。そうしたときに支持率回復のため国民の目を国外に向ける手法は、古くから政治の世界で使われてきたものです。危機に直面し、世界中がリボーンしようと苦しんでいる最中に、古臭い政治手法を使うリーダーなど信用できないでしょう。

「経済」は国民の消費活動によって成り立ち、その消費活動は国境を超えて国々の経済、ひいては人々の生活を潤すのです。切磋琢磨するような「良き」ライバル関係を保つ「対立」は互いを成長させるために有益かもしれませんが、「排除」を内包した「対立」は必要ないのです。

コロナによるパンデミックで、「世界中はつながっている」という誰もが強く感じたであろう事実を目の前に、世界中の国々や各国の国民は何を思い、どのような行動をするのでしょうか。

日本の国民はフェアな目線を持ち、危機の中でも情報を正しく捉え、判断できる存在であることを願っています。

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