インドでは「アドハーシステム」(インド版マイナンバーカード)の普及率が9割を超えている。著述家のグルチャラン氏は「インドでは2017年以降、デジタル革命が急速に進んでいる。その起爆剤が『アドハー』だ。行政の効率化やキャッシュレス化の進展に寄与している」という——。

※本稿は、グルチャラン・ダス、野地秩嘉『日本人とインド人』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

INDIA AADHAAR CARD
写真=EPA/時事通信フォト

「会社登記は3日で完了」インドで進むデジタル革命

経済改革の後、IT産業を中心にインドにはニューマネーが登場したのですが、決め手となったのは規制緩和と2017年以降のデジタライゼーション(デジタル革命)でした。アドハーシステム(インド版マイナンバーカード)が一般化されたこともあり、インドではオンラインで税金を払うことができますし、還付もまたオンラインです。

ネルー、インディラ・ガンジーの時代、新しく会社を興そうと思ったら書類が50枚以上も必要でした。会社の登記に1カ月半から2カ月かかっていたのが今ではオンラインで3日でできます。しかし、シンガポールではわずか1日ですから、まだまだインドは遅れています。

聞くところによれば、日本は法務局に届け出をするなどという手間をかけて、手続きに1週間もかかるそうですね。それではIT先進国とはいえません。IT、デジタライゼーションに関しては、日本とインドはそれほど変わらないというか、本人確認や税務申告ではあきらかにインドの方が進んでいます。

2009年のことですが、インドは固有識別番号庁(UIDAI)を創設してアドハーシステムの整備を開始しました。

インド版マイナンバー「アドハー」、普及率は9割以上

アドハー(Aadhaar)システムは国民識別番号制度の名称です。Aadhaarとは、ヒンディー語でファウンデーション(foundation)という意味。物事の基盤ということでしょう。

アドハーの技術は日本のNECのそれが基礎になっていて、東京オリンピック・パラリンピックの本人確認にも通じるものです。指紋、顔、虹彩の認証を組み合わせ、1日最大200万件を登録できます。