キャッシュレス社会先進国インド
前述の通りインドでは本人確認の手間暇や信用調査の煩わしさから、クレジットカードが普及していませんでした。人口約13億人に対して過去に発行されたクレジットカードの数は4500万枚、普及率はたったの3パーセントです。使う人が複数枚、持っていると考えれば実際には1パーセントに満たないかもしれません。
政府はクレジットカードの普及率を上げるよりも、アドハーとスマホでキャッシュレス社会を実現しようとしています。インドの携帯電話の普及台数は10億台ですから、クレジットカードを普及させるよりも、デジタル金融プラットフォームを整えたほうが時間もかかりませんし、はるかに安上がりなのです。
急速に広まったEコマース(ネットショッピング)や街頭での買い物代金は、直接、自分の口座から引き落としできるため、デビットカードも要りません。お金が足りないときは認証データに基づいて直ちに割賦払いや1000円のローンを組むことも可能です。
キャッシングに目をつけたのが2008年にノンバンクとしてスタートしたDMIとDMIのような金融ベンチャーでした。アドハーとデジタル金融プラットフォームのおかげでいくつものベンチャー企業が誕生したのです。
こうした金融ベンチャーについては、日本の金融機関はちゃんと勉強したほうがいいかもしれませんね。どこの国でも若い人にはクレジットカードやデビットカードよりもスマホの方が身近な存在ですし、扱いに慣れているからです。しかも、体から離すことはない。
「新紙幣+デジタライゼーション」の可能性
インド経済は新紙幣発行以来、人の体でたとえるなら・血液・に当たる・お金・が流れなくなったため、一時的な心肺停止状態に陥りました。しかし、すでに回復しました。新紙幣+デジタライゼーションがインド経済の血液循環を促進しています。
2017年7月からはモディ首相が悲願としていた物品・サービス税(GST)の全国統一化が施行されました。州ごとに異なっていた間接税が一律となり、物品税や付加価値税がGSTに一本化されたのです。
これまで州境では複雑な税金の手続きを行うために物流の長蛇の列ができていましたが、一気に解消されつつあります。さらに、税率が一律となったため膨大な税務処理コストも大幅に削減されました。
デジタライゼーションの効果が実際に表れています。