米国が最終的に脱退するかどうかは、大統領選の結果次第
読売社説は指摘する。
「WHOは、米国の主導で1948年に創設されて以来、ポリオなどの感染症対策や公衆衛生の向上で大きな役割を果たしている。150か国以上に要員を配置し、医療情報や物資が乏しい途上国にとっては欠かせない存在だ」
「米国はWHO予算の約16%を拠出している。米政府の資金が途絶えれば、WHOの活動への打撃は避けられない。コロナのワクチンや治療薬の開発においても、米国と各国の協力体制に悪影響が及ぶ恐れがある」
「発展途上国への援助の重要性」や「ワクチンと治療薬の開発」をトランプ氏はどう考えているのか。アメリカさえ良ければそれでいいといいのか。
次に読売社説は「11月の大統領選を前に、トランプ氏がWHOを標的にして政権への批判を避けようとしているのなら無責任だと言わざるを得ない」と批判したうえでこう指摘する。
「大統領選でトランプ氏に挑むバイデン前副大統領は、当選した場合、WHOに残留するとの考えを示した。米国が最終的に脱退するかどうかは、選挙の結果次第ということになった」
「トランプ氏の自国第一主義か、バイデン氏の国際協調主義か。米国の有権者は、重大な選択を突きつけられている」
アメリカの有権者だけではなく、11月の大統領選は世界各国の人々にとっても大きな関心事なのである。
世界がひとつにまとまる「連帯」が何よりも重要
次に東京新聞の社説(7月9日付)を読んでみよう。
東京社説は「米国WHO脱退 危険で独善的な決定だ」との見出しを付け、まず「運営への不満を理由としているが、世界をいっそうの危険にさらす、独善的な決定だ。すみやかな撤回を求める」と主張する。
だが、撤退を日本の1新聞社が求めたところで、トランプ氏は言うことを聞く相手ではない。東京社説は書く。
「WHOの初動について多くの国が、疑問を持っているのは間違いない。テドロス事務局長は、最初に感染が確認された中国側の言い分をうのみにし、対応が遅れた」
確かにWHOの対応はまずかった。どうして中国の肩を持ったのか、不信感は消えない。
東京社説は「しかし、世界では感染者が一千万人を超えており、日本でも感染終息の気配はない。ブラジルでは大統領の感染も明らかになった」と指摘したうえで、こう主張する。
「拡大を食い止めるため、WHOを中心に世界がまとまることが求められている」
世界で流行を拡大させるパンデミックのなか、世界がひとつにまとまる「連帯」が何よりも重要なのである。新型コロナウイルスを封じ込め、コントロールするには国際協力が欠かせない。