重症化する患者をあらかじめ見極めるという難題
ところで世界がパンデミックに陥っているなか、大切なのは「連帯」の意識、つまり国際協調である。コロナ禍に勝つにはこの国際協調しかない。
これまでの研究で、新型コロナウイルス感染症は、80%以上の患者が無症状もしくは軽症で済んで回復し、14%の患者に深刻な症状がみられ、残りの5%が呼吸困難や多臓器不全など命に関わる病態になることがわかっている。
なぜ、無症状の感染者が存在するのか。重症化する感染者を見極めるにはどうすればいいのか。見極めができれば、軽症者で病室があふれ返ってほかの患者の治療ができなくなるという「医療崩壊」を防ぐことができる。無症状だった人が急に悪化して亡くなる事態もなくなる。
研究者や専門家だけではなく、政界から財界まで世界各国の人々が連帯の意識を強く持って真に協力することができれば、重症化する患者をあらかじめ見極めるという難題にも立ち向かえるはずである。
読売社説も「協調を阻害する一方的な行動」と強く批判する
読売新聞の社説(7月10日付)も「米のWHO脱退 感染症対策を阻害するだけだ」とトランプ氏を批判する見出しを掲げてこう書き出す。
「新型コロナウイルスは今も世界各地で蔓延が続いている。国際社会が一丸となって対策に取り組むべき時に、協調を阻害する一方的な行動をとるのは理解しがたい」
「協調を阻害する一方的な行動」とは強い言い回しである。保守で知られる読売社説でさえ、ここまで批判するのだからトランプ氏のWHO脱退は最悪だ。
読売社説は「コロナ感染が中国で最初に拡大した段階で、WHOが適切な対応をとれず、情報発信のあり方や中立性について問題が露呈したのは事実だ。WHOには公正な検証と組織改革が求められている」とWHOに反省を求めながらも、さらにアメリカのWHO脱退を戒める。
「だが、米国がWHOから脱退しても、事態が改善するわけではない。コロナ対策の司令塔である組織が揺らぎ、中国の影響力が拡大することは得策と言えるのか」
世界がパンデミックという危機的状況から脱出するには、やはりしっかりとした司令塔が欠かせない。アメリカが脱退すれば、WHOは中国の天下になる。習近平(シー・チンピン)国家主席が、ほくそ笑む顔が目に浮かぶ。