「お互い同じことを思っていた」と気づかせる
三谷産業で行ったのは“伝言指示ゲーム”ともいうべきエクササイズ。まず12人を2チームに分け、おのおのマネジャーとリーダーを一人ずつ任命する。ミッションが与えられるのはマネジャーだけで、そのマネジャーが指示できるのはリーダーのみ。それも筆談で行う。また、リーダーがスタッフに指示を与えるのも筆談である。
「あらかじめ配られたバラバラのカード4枚を交換し合って、各メンバーが同じカードを揃えられるようにする」というミッションであったのだが、達成できたのは片方のチームだけだった。しかし、事の成否は重要ではない。終了後に「自分がどのカードを持っているのかリーダーを通して伝えれば、マネジャーの役に立ったはず」といった意見が出るなど、チームワークの重要性を再認識し、忌憚のない意見を出し合えるようになることが大切なのだ。
そして、佐俣さんが「リチーミングのキーになる」と指摘する一と二のステップ、つまり理想像を描き、それに近づくための具体的なゴールを決める作業に入っていく。まず、たんに自分たちのチーム内の理想像を描くだけではなく、「他の部署から見たら、どんなことをしてほしいと思うか」など、メンバーが多角的な視点で考えられるようにリチーミングコーチは工夫する。
この段階で先の準備体操の効果が早くも表れて、活発な意見が出始める。ほとんどの場合、そこで「お互いに思っていたことは同じだったのか」ということに気づく。そうなれば、一つの理想像に絞り込んでいくのはたやすい。そのとき各メンバーには、理想像に近づくために身につけるべきスキルや、取り組むべき仕事など具体的なゴールがすでに見え始めているからである。
次にそのゴール達成のメリットを全員で確認した後、それに向けてすでに何か自分たちが努力していること、取り組んでいることを洗い出す。というのも、そこに理想像に近づいていくための具体的な問題解決の糸口が隠されているから。先に佐俣さんは「自分では気づいていなくても、人は問題を解決するために実行可能な方法をすでに持っているという考え方に基づいています」と述べていたが、その〝方法.を顕在化する作業ともいえる。