三谷産業の研修でリチーミングコーチを務めたEAP総研の佐俣友佳子さんはこのように語る。ちなみに日本でこの資格を持っているのは佐俣さんと同社社長の川西由美子さんだけ。また、同社はリチーミングコーチを養成する国内唯一の認定機関でもある。

90年代前半のフィンランドといえば、隣国・ソ連の崩壊の影響で大不況に突入し失業率は二ケタ台へと悪化していた。それが90年代後半から徐々に好転。2001年に世界経済フォーラムの国際競争力ランキングで初めてトップに躍り出てからは上位10カ国の常連になる。失業率も一ケタ台で落ち着き、まさに様変わりの状況である。

その過程で多くのフィンランド企業で活用されたのがリチーミングであった。代表例が通信機器メーカーのノキアで、グループ再編にともなうチームワークの強化に利用されている。また、フィンランド航空、フィンランド国際郵便などでも活用され、「フィンランド企業の人材開発担当者でリチーミングのことを知らない人はいない」(同国IT企業関係者)といわれる。つまり、フィンランド経済復興の“縁の下の力持ち”といってもよい存在なのだ。

そして、ボルボ、ドイツ銀行などリチーミングの効果に注目する他国の企業も現れ、「現在、日本を含め15カ国でリチーミングが活用されています」と佐俣さんはいう。特に日本の場合は、景気低迷で社員の士気が落ち込むなど、90年代前半のフィンランドと似たような状況にあるだけに、リチーミングを活用する余地はかなり大きいものと考えられる。

「リチーミングは、よりよい方向に変わりたいと願っているグループとそこに属する個人が、12のステップに基づいてゴールをセッティングし、そのゴールを達成するためのモチベーションをアップさせながら協力体制を構築していく、総括的かつさまざまなニーズに応える方法です」

開発者のファーマン氏は自著のなかでおおむねこのように説明する。

そのリチーミングの根幹をなす12のステップを示したものが102ページの図だ。「理想像を描く」に始まり、最後は「成功を祝い、サポーターに感謝する」ステップで終わる。ただし、これらすべてのステップを踏んでいく必要はなく、ケースに応じて取捨選択して構わない。先の三谷産業の研修で実践したのは合計7つだった。

さて、具体的なプログラムの実践であるが、その前に参加メンバーで“準備体操”を行っておくことが重要になるそうだ。「日本の企業組織では、自由に意見をいう雰囲気がまだ乏しいのが現状です。それでは、本当に自分たちが考えている理想像もゴールも出てきません。そこである種のエクササイズを行って、心を解きほぐすことが大切になってきます」と佐俣さんはいう。